2020年の男女ゴルフツアーが新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕戦からストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

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▽2015年(平27)大会(3月21~23日、佐賀・若木GC)

当時31歳の飯島茜が、5年ぶりとなるツアー7勝目を飾った。通算3アンダーで並んだ、元賞金女王の全美貞との6ホールに及ぶプレーオフを制した。

88年のツアー制施行後としては、2度あった7ホールのプレーオフに次ぐホール数。その間、1時間46分で、時間としては久保樹乃が木村敏美、山崎礼奈を破った、02年5月のヴァーナルレディースの1時間55分に次ぐ2番目の長さだった。

前日の第2日終了時点で3アンダーの飯島に対し、全は2オーバーだった。飯島は最終日の18ホールをイーブンパーとスコアを伸ばせず、5打差を追いつかれていた。それでもプレーオフは切り替え、粘り勝った。死闘を制した飯島に涙はなく、疲れと安堵(あんど)感の笑みを浮かべていた。

プロ2年目の06年から重ねた優勝が、6勝目を挙げた10年のゴルフ5レディースを最後に遠ざかっていた。若手の台頭に「このままじゃ引退だ」と危機感に駆られ、男子の片山晋呉に弟子入りして約3年。軌道が修正された理想のスイングを手に入れていた。

2位につけた第2日を終えた際には、片山から電話で「自分から攻めちゃダメ。まずフェアウエーに置いて、フルショットの距離が残った時だけ狙うように」と言われていた。その助言通り、プレーオフ6ホール目、18番パー5の第3打は、ピンまで92ヤード。「やっとフルショットでいける」。50度のウエッジでピン前1・5メートルにつけた。全がバーディートライを外すと、チャンスを決めてガッツポーズをつくった。「勝ちたい、という気持ちが消えたら、引退だと思う」。5年ぶりの優勝をかみしめていた。

■過去5年の優勝者

15年 飯島茜

16年 大江香織

17年 菊地絵理香

18年 鈴木愛

19年 上田桃子