2020年の男女ゴルフツアーが新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、開幕戦からストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

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▽2019年(令元)大会(5月31日~6月2日、静岡・グランディ浜名湖GC)

尾崎将司の愛弟子、原英莉花が、プレーオフの末、ツアー37戦目で涙の初優勝を飾った。3位でスタートした最終日は7バーディー、1ボギーの66で通算14アンダー、202で首位に浮上。ペ・ソンウ(韓国)とのプレーオフを制した。98年度生まれの「黄金世代」としては、勝みなみ、畑岡奈紗、新垣比菜、大里桃子、河本結、渋野日向子に次ぐ7人目の優勝となった。

優勝が決まった瞬間、原は右手を高々と突き上げた。プレーオフ2ホール目の15番パー3。2メートルのバーディーパットを沈め、173センチの長身で目いっぱい喜びを爆発させた。その後、表彰式の18番に引き揚げる途中で、ギャラリーの祝福と大歓声に涙があふれた。「ものすごくうれしい気持ちでいっぱいです。今季は、ずっと強い気持ちでプレーしていましたが、勝てませんでした。でも、諦めずにプレーしてきてよかったです。皆さんの『おめでとう』の声をいただき、涙が出てきました。途中苦しかったんですけど、結果、こうして勝てて本当によかったです」。涙の後に、最高の笑顔を見せた。

最終日は一時、4人が首位に並ぶ激戦だった。原は、1番から3連続バーディーと好発進したが、その後はスコアを伸ばせず、後半開始の10番でボギーをたたき、優勝争いから脱落しかけた。だが14番から4連続バーディーで首位に再浮上。プレーオフで振り切る、勝負強さを披露した。

高校1年で尾崎将に弟子入りした。持ち前の美貌に加え、師匠の「ジャンボ」譲りの飛距離で注目を集め、優勝争いには絡みながらも、初優勝が遠かった。「(尾崎将から)自分が分かっていないと何度も怒られました」。シーズン前に、この年の目標を賞金女王に掲げれば、師匠から「大きな目標じゃなく、目先の目標を決めろ」と言われた。原は「でも、それで、まず1勝と思って取り組めました」と振り返る。優勝の瞬間に掲げた右手とは逆の左手は、師匠から贈られたパターを握りしめていた。

優勝会見で、尾崎将からの祝福のコメントが披露された。「誰でもラッキーで勝つことはある。大事なのは2つ目の勝利をとらえにいかなくてはならない! それが大事!」。原は神妙に聞いていたが「スキップして、1勝しましたと報告に行きます」と話し、会場の爆笑を誘った。大物感漂う、新たなヒロインが誕生した大会となった。

■過去5年の優勝者

15年 テレサ・ルー

16年 表純子

17年 姜秀衍

18年 岡山絵里

19年 原英莉花