2020年のゴルフツアーは国内、海外ともに新型コロナウイルスの感染拡大に伴いストップしている。ここまで中止、延期となった各大会の名場面を振り返ります。

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▽2017年(平29)大会(8月10日~13日、米ノースカロライナ州クウェイルホローC)

当時25歳の松山英樹が、わずかに日本男子初のメジャー制覇を逃した。最終日に一時は単独首位。だが11番からの3連続ボギーなどで失速した。5バーディー、6ボギーの72で、通算5アンダーの279で5位。同組でスーパーショットを連発して優勝した、ジャスティン・トーマスとは3打差だった。

世界ランキング3位、同年の全米選手権は2位、前週のブリヂストン招待を制し、堂々の優勝候補として臨んでいた。第1日15位から、第2日にメジャーでの自己ベストを更新する64をマーク。通算8アンダーで、メジャー21試合目で初めて首位に立った。第3日はスコアを2つ落としながら、首位キズナーに1打差の2位と踏ん張り「1ストローク差というのはテンションが上がりますね」と、最終日への思いを語った。調子も、コースとの相性も悪くはない。予感は十分だった。

最終日は2番でボギー先行も、6、7番で連続バーディーを奪った。パーセーブした8番で、ついに単独首位に立った。バーディーとした10番。同組のJ・トーマスの2・5メートルのバーディーパットは、半分カップをのぞいた状態で左フチで静止し、10秒ほど後にカップイン。J・トーマスは、左に曲げながら木に当たってフェアウエーに戻る第1打に続き、このホール2度目の幸運だった。松山は「ああいう形でバーディーを取って『何か持っているな』と思いましたけど…」と、風がJ・トーマスに吹いていることを感じ始めていた。

続く11番パー4は「あのセカンドショットが痛かった」と振り返るほど、第2打でミスした。フェアウエーからグリーン右に外してボギー。「うまく立て直せなかった」と、12、13番でもスコアを落とし、3連続ボギーを喫した。14、15番で連続バーディーを奪い、優勝争いに踏みとどまっていたが、16番パー4で再びボギー。対するJ・トーマスは、17番パー3で手前の池近くに切られたピンを果敢に攻め、4メートルにつけるスーパーショットでバーディーを奪った。松山は3打差をつけられ、勝敗は決した。

ホールアウト後のテレビインタビューでは、涙を流し、何度もタオルで顔を覆った。「ここまで来た人はいっぱいいると思いますし、ここから勝てる人と勝てない人の差が出てくると思いますし、勝てる人になりたいなと思います。何をしたら勝てるのか(今はまだ)分からないですけど、また一生懸命、練習したいなと思います」。メジャーでのトップ10入りは、中嶋常幸の6度を上回る日本人男子最多の7度目。頂点に迫った分だけ、悔しさが募っていた。

■過去5年の優勝者

15年 ジェーソン・デー(オーストラリア)

16年 ジミー・ウォーカー(米国)

17年 ジャスティン・トーマス(米国)

18年 ブルックス・ケプカ(米国)

19年 ブルックス・ケプカ(米国)