若手女子プロゴルファーの脇元華(22=フリー)が、故郷宮崎で“見えない開幕”に備えている。ツアー本格参戦1年目の昨季、賞金ランク47位とギリギリで初シードを獲得。

今季は待望のシーズンだったが、所属はフリーゆえに、ほぼ無収入の日々を送る。「早く試合がしたい思いは強いけど、怖い気持ちもある」と、思いは複雑だ。 

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家でじっとしていられない。脇元は「ほぼ毎日、ラウンドしています」と言う。不要不急の外出を控える意識はある。感染者が比較的少ない宮崎市でもそれは同じだが、極力「3密」を避けてコースに足を運ぶ。

開幕が楽しみだった。「やっとフルシーズン戦える権利を得た。次は初優勝だ~、やったるぞ~って思ってました」。3度目の挑戦で合格したプロテスト。その翌年だった昨季、歯を食いしばってシードを初奪取。シーズン39戦中38番目の大王製紙エリエールは、ストレスで胃腸不調の中、34位で賞金57万円を得た。「きつかった。最後の最後まで気が抜けなくて」。賞金ランクはシード獲得圏50位内の47位。ボーダーラインと約169万円差だった。

今は金銭面も切実だ。「賞金シード選手」=「金持ち」と思われがちだが、1億円前後稼ぐ選手と、2400万円前後の下位選手では事情が違う。ツアー経費は宿泊、移動費、レンタカー、キャディー代など含めると、1試合で40万円前後。年間30試合以上なら、1200万円以上だ。

昨季約2570万円を稼いだ脇元は「予選落ちなら丸々赤字。経費は年間で(獲得賞金の)半分以上かかったと思う」という。派手に見えても、無収入が続く状況の感覚は、世間一般の個人事業主に近いかもしれない。

今季ツアー37戦のうち、すでに16戦が流れた。

「ツアーがいつ始まるか、予想できないです。秋口かな…。試合をやりたい気持ちは強い。選手はきっと、みんなそうじゃないですか? でも、怖い。もし(ウイルスに)かかっちゃったら、家族もいますから」

モデル・スタイルで注目される22歳は揺れる思いで、球を打つ。【加藤裕一】

◆脇元華(わきもと・はな)1997年(平9)10月4日、宮崎県小林市生まれ。ゴルフは8歳から。中学1年で読者モデルのオーディションを2度受ける。宮崎日大1年の13年大王製紙エリエールでツアー初挑戦予選通過。プロ宣言後の18年に台湾ツアーで優勝、同年プロテストに3度目の挑戦で合格。家族は父、妹、祖母。174センチ、64キロ。