国内ツアー通算64勝、数々の名勝負を演じたゴルフ界の“レジェンド”中嶋常幸プロ(65)による「ゴルフ流 Education」。ジュニア育成を目的とする「トミー・アカデミー」を主宰している経験も踏まえ、子育て世代、指導者へメッセージを送ります。

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ゴルフはよく「忍耐力が必要なスポーツ」といわれます。確かに一般ゴルファーでもプロでも、自分のミスを我慢できず、集中力が切れてしまって大たたき…ということはあります。忍耐力は大事です。

同時に、僕はゴルフに限らずスポーツをやる上ではどんな競技でも、「遊び」の域を離れて「競技会で好成績を出す」「プロを目指す」「技術を極める」などが目標になれば、忍耐は必要になると思います。

上達のためには「研究して向上していこう」という心が必要。この研究心や向上心と忍耐はセットなんです。忍耐がなければ、向上心も研究心も続きません。逆に研究心や向上心が強ければ、忍耐力もついてきます。片方だけでは成り立たないものと感じます。

スポーツだけでなく、書道とか華道とか「道」の世界でも、やはり忍耐は必要でしょう。「遊び」ではなく「極めよう」と思えば、芸術や学問などの各分野も同様でしょう。ジュニア世代の場合、その忍耐を保護者や指導者がサポートしたいですね。堅苦しい話ではなく、本人が自覚し、上達するための練習、努力を重ねることが、後で振り返れば忍耐なんです。

現代のジュニア世代は、気持ちの切り替え方がうまい。僕の「トミー・アカデミー」の生徒の中に、合宿中の食事の前後や移動の時にいつも鼻歌を歌っている子がいますが、決してふざけているわけではなく、練習やトレーニング、講義の時は大まじめです。忍耐力というとストイックなイメージが強いけど、子どもなりのメリハリは理解してあげましょう。(中嶋常幸)

◆中嶋常幸(なかじま・つねゆき)1954年(昭29)10月20日、群馬県生まれ。父巌氏の英才教育で腕を磨き、73年日本アマで最年少優勝。75年プロ入り。翌年初勝利を挙げ、13年スターツシニアまで国内ツアー通算64勝、レギュラーツアー賞金王4回。青木功、尾崎将司とともに「AON時代」をつくる。88年全米プロ3位など、米メジャー4大会すべてでトップ10入りした初の日本選手、史上初の日本タイトル7冠達成。19年1月日本プロゴルフ殿堂入り。12年から「トミー・アカデミー」を主宰している。静ヒルズCC所属。