国内女子ツアーメンバー最年少、18歳8カ月の西郷真央(大東建託)が、史上初のプロ初戦での優勝へ、猛チャージで2位に浮上した。5バーディー、ボギーなしの67で回り、通算8アンダー、208。“ジャンボ”こと師匠の尾崎将司からは「せごどん」と、幕末の英雄・西郷隆盛と同じ愛称で呼ばれ、期待されてきた逸材だ。最終日は優勝をかけ、3打差の首位田中瑞希(21)、2位で並ぶ古江彩佳(20)と最終組で回る、新時代到来を予感させる展開となる。

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鹿児島出身でなくても、まゆげが太くなくても「せごどん」の度胸の良さ、勝負強さは、新人離れしていた。17番パー4の第3打。西郷は9メートルのパットを強気に打ち、一直線にピンに当ててバーディーを奪った。続く最終18番パー5では、第3打を2メートルにつけてバーディー。ショット、パットがかみ合った。16番パー4を含む3連続バーディー締めに「明日につながる」と笑顔。史上初のプロ初戦での優勝に大きく近づいた。

本来なら3月に高校生プロとしてデビュー予定だった。昨年、受検できる年齢が1年引き下げられたプロテストに笹生優花、山下美夢有とともに、当時高校3年で合格。新型コロナウイルスの影響で開幕が3カ月半遅れ、大学生となったが誕生日が最も遅い西郷のツアー最年少は変わりない。むしろ「オフが長かったので、その分、成長できる時間を与えてもらった。いい状態で試合に臨めた」と、この間の成長を自認する。

成長をもたらしたのは、師匠の存在だ。高校入学前の17年3月に「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」の1期生に合格し、指導を受けてきた。昨年は日本女子アマで優勝。師匠には年明けからほどなく「シード権を取る」「(昨年の参加資格が優勝経験者と賞金ランク30位までなどの)最終戦リコーカップに出る」と、プロ1年目の誓いを立てた。尾崎からは開幕戦が決まらない時に「試合が始まらないけど、しっかり調整して頑張れ」と声を掛けられ、トレーニングにも励んだ。オフの間にドライバー飛距離は10ヤードほど伸びていた。

史上初の全日程無観客開催だが「アマチュアの試合は、ギャラリーが入らないので」と、プロの試合に慣れていないことがマイナスにはならない。現在の日本人女子プロは、渋野ら黄金世代の層が厚く、1学年上のミレニアム世代も注目選手が多い。両世代の田中、古江と最終日の最終組でラウンド。若さの象徴のような両世代より、さらに若い西郷は「優勝するためのプレーではなく自分らしいプレーを」と無欲だ。江戸幕府を倒し、明治維新の立役者となった西郷隆盛。令和の「せごどん」が、新時代を切り開く可能性は十分だ。【高田文太】

◆西郷真央(さいごう・まお)2001年(平13)10月8日、千葉・船橋市生まれ。5歳から競技を始め、14年関東中学選手権優勝。17年3月、セレクションの末「ジャンボ尾崎ゴルフアカデミー」1期生に合格。麗沢高では18年の関東高校選手権団体、昨年の日本女子アマで優勝。プロツアーにはアマチュアとして計10試合出場し、最高成績は昨年のニトリ・レディースの30位。昨年11月にプロテスト合格。今春から日本ウェルネススポーツ大に進学。目標の選手は不動裕理と申ジエ。趣味はお笑い鑑賞。158センチ、57キロ。

◆平均年齢未成年の最終日最終組 黄金世代の21歳田中、ミレニアム世代の20歳古江、ポスト・ミレニアム世代の18歳西郷の平均年齢は19・67歳。昨年6月リゾートトラストも同じ19・67歳で、顔ぶれは20歳の渋野、河本と19歳古江だった。

◆日本人の国内プロデビュー戦ツアー優勝 西郷は昨年11月の最終プロテストに合格し純然たるプロ初戦。日本女子プロゴルフ協会入会後の初戦で優勝すれば、10年アン・ソンジュ(韓国)以来で日本人では初。野村敏京が11年5月中京テレビ・ブリヂストンで国内プロデビュー戦Vを飾ったが、前年の10年に米国でプロ転向、米下部ツアー優勝者として出場したもの。単独首位の田中は西郷と同じ昨年プロテスト合格者だが、昨季はTP(トーナメントプレーヤー)単年登録で33戦に出場、今回がプロ転向34戦目になる。

▽大里桃子(渋野の親友で、首位の田中とは高校時代の同級生)「パターでミスが増えたので悔いが残る後半でした。明日はそれを忘れていければ。(首位と5打差に)明日はビッグスコアを出せれば」

▽臼井麗香(出入りの激しいゴルフながら70で回り、7アンダーで4位につけ)「目の前のバーディーを取ることだけに集中して、ビッグスコアでないと勝てないのは分かっているので、しっかり調整したい」

▽渡辺彩香(スコアを1つ伸ばし7アンダーで優勝圏内に踏みとどまる)「最後バーディーを取れたので、いい流れで明日は入れると思う。全部がいい感じでかみ合えば、もうちょっといいプレーができると思うので頑張りたい」