女子ゴルフの渋野日向子(21=サントリー)が、前代未聞の「140人抜き賞金女王」への第1歩を踏み出す。

予選落ちした今季開幕戦以来、4カ月ぶり2戦目の国内ツアー出場となる樋口久子・三菱電機レディース(30日開幕)に向けて29日、会場の埼玉・武蔵丘GCで最終調整した。今年と来年が統合された今シーズンは、すでに140人が賞金を獲得する中、渋野は0円。日本女子プロゴルフ協会も「記憶にない」という、ごぼう抜きでの逆転賞金女王の期待がかかる。

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数え切れないほど「おかえり」とあいさつされ、渋野は自然と笑みをこぼしていた。練習ラウンド中も、仲の良い同い年の大里桃子を、おもちゃのヘビを使って驚かせるなど、終始笑顔だった。だが表情とは裏腹に「米国よりも緊張感がある」と語った。米国4戦で予選を通過したが、国内ツアーは予選落ちした開幕戦以来2戦目。「まだ日本で予選を通過できていない。予選を通過できるように頑張りたい」と力を込めた。

昨年は鈴木愛に次ぐ賞金ランク2位で、今年は初の賞金女王を目指して開幕に備えた。だが新型コロナウイルス感染拡大の影響で開幕は遅れ、試合数は激減。当初計画していた来年からの米ツアー本格参戦も、予選会が中止となった。夢の東京五輪も延期され、来年も軸足は国内となることが必至。今大会から年内5試合を国内で戦うが「米国でいろんなことを吸収してきた。それを取り入れつつ、日本ならではの攻めも忘れず、積極的なプレーをしたい」と成長を自認する。予選通過なら国内での今年初の賞金。異例の長いシーズンの特性を生かし、賞金女王争いに名乗りを上げる。

もちろん逆転賞金女王は容易ではない。現在、ランク1位の笹生優花の賞金は7000万円目前。渋野の上には140人もいる。日本女子プロゴルフ協会によると、正式な記録はないが100人以上抜いて賞金女王という前例は「記憶にない。昨年、開幕戦で予選落ちして、53人抜きした鈴木愛選手が最も多いぐらい」という。日本人2人目のメジャー制覇を果たした渋野だけに、前人未到の偉業を手土産に米ツアー挑戦の期待がかかる。【高田文太】