松山英樹(29=LEXUS)が、大会自己最少の65をマークし、マスターズでは日本人選手初の単独首位に立った。6位で出て1イーグル、5バーディー、ボギーなしと7つ伸ばし、通算11アンダー、205、2位ジャスティン・ローズ(英国)に4打差をつけた。雷雲接近で77分間の中断があったが、再開後の8ホールで猛チャージ。抜群のパッティングと安定したメンタルを武器に、スコアを6つ伸ばした。最終ラウンドは日本人で初めて最終日最終組を回る。

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再開のホーンは、大爆発への合図だった。松山は11番パー4のティーショットを大きく右に曲げ、ラフにつかまっていた。その時点から77分間中断。再開後、最初の一打となった第2打を、残り170ヤードから5メートルにつけると、早速バーディーを奪った。続く12番パー3は、ティーショットを3メートルにつけ、今大会初の連続バーディー。ついに第1Rから首位のローズに追いついた。神に祈るしかないといわれるほどの難しさから「アーメン・コーナー」と呼ばれる11~13番で、逆に伸ばして勢いは加速した。

本当の見せ場はここからだった。15番パー5。残り205ヤードからの第2打は、難しいピン位置にもかかわらず2・5メートルに寄せた。これを決めて3日連続のイーグル奪取。単独首位の9アンダーとすると、ここからは1人旅。続く16番パー3はティーショットを1メートル余り、17番パー4は第2打を2メートルに寄せ、連続バーディーを奪った。今大会ただ一人のボギーなしラウンドで、2位に4打差をつけた。

松山 3日間、あまり波を立てることなく、怒らずできた。明日(最終R)はそういうことがすごく大事になってくる。それができれば、すごくチャンスがある。(4打差首位は)全然想像していなかったが、本当にいいプレーができた。明日の朝も、今朝と同じような感情でプレーしたい。

中断前、最後のショットは「今週1番悪いぐらい」と評した。嫌なイメージを持ったまま中断したが「これ以上悪くはならない」と引きずらなかった。中断中はゲームなどでリラックスに努めて好転。切り替えの速さは、プロでは初、今年からタッグを組む目沢秀憲コーチの影響という。昨年までを「自分1人で何がダメとか、フィーリングだけでやっていた。自分が正しいと思いすぎていた」と分析。それが「今は客観的な目を持ってもらいながら、正しい方向に進んでいると思う」という。日本で数人という、米国レッスンライセンスTPIを保持し、1学年上の同氏の的確な指導は、何よりも一人で抱えていた重圧を軽減。ラウンド中の笑顔は格段に増えた。

初挑戦から10度目のマスターズで、日本男子悲願のメジャー初優勝を目前にした。海外メディアにマスターズの思い出を問われ「最初に見たのはタイガー・ウッズの優勝。その場で、自分もいい位置にいるのはすごくうれしい。明日、いいプレーができるように準備したい」と笑った。日本ゴルフ界の歴史に、新たな1ページを加えられるか。