石川遼(29=CASIO)の体を見て驚いた。今年初めての男子国内ツアー取材だったダイヤモンド・カップ。昨年、ゴルフ場で見たときと別人だった。上半身が盛り上がり、二の腕はシャツの袖がぴちぴちに見えるほど太くなっていた。ゴルフ上達のため毎年、いろんなことにトライしているが、今年は肉体改造とスイングの改良に取り組んでいるようだ。

石川のゴルフへの姿勢はまるで修行僧のようだ。いいゴルフをしたように見えても満足しない。自分の理想を目指し、日々努力を積み重ねている。石川のように、国内ツアーで大きな成功をつかんでも、まだ「ゴルフがうまくなりたい」「また米ツアーでやりたい」と目標に突き進む姿には頭が下がる。

そんな石川が最近よく口にするのが、ジュニアなど若い世代の育成の話だ。今大会は、第1日から2日連続でアマチュアの選手が首位に立つなど、若い選手の活躍が大きな話題となった。特に第1日に首位に立った杉浦悠太(日大2年)は、17年、18年と石川が主催したジュニアの大会で優勝した選手。石川も、自分のことのように喜んでいた。

「ゴルフ界にいる人間として、若手の育成はできる限りしていかないといけないと思う。自分の思いとしては、コースが選手を育てるというのがある。その思いをジュニアマスターズ(石川が開催する大会)で実現できるというのは、やりがいがある」。石川は熱っぽく話した。

ゴルフに限らず、その競技のトップに立つ選手は、自分がやってきた競技を引き継ぎ、世界で戦ってくれる後進の育成への思いが強くなると思う。F1の中嶋悟氏は、日本人で初めてF1全戦にフル参戦したドライバーとなったが、世界で戦ったのは、体力がピークを過ぎた34歳の時だった。その中嶋氏は、F1ドライバー時代に、次世代の若手を英国の自分の家に住まわせ、F1を目指す下部のレースでの戦いをサポートした。そして引退後、ホンダとタイアップして若手育成のためのレーシングスクールを立ち上げ、佐藤琢磨や今季7年ぶりのF1ドライバーとなった角田裕毅らを育て上げた。

石川も、中嶋氏と同じような思いを抱いていると思う。だから、自分のゴルフだけを追求するだけではなく、若手の育成にも時間を割く。他の選手から「遼さん」と呼ばれることが多くなったと苦笑するが、日本のトップゴルファーとして若手のお手本になり、若手の育成にも大きな力を発揮してほしいと思った。【桝田朗】