98年度生まれの黄金世代の山路晶(22=森六グループ)が国内男女ツアー史上初となる1ラウンドで2度のホールインワンを達成した。確率6700万分の1とも言われる新記録。主催者から特別に賞金合計110万円が贈られたが、ホールインワンに800万円の賞金があった最終日であれば、1600万円の荒稼ぎのはずだった。スコアも5番でOBを打つなど、調子の波が大きく、通算4オーバー、148の75位で予選落ちとなり、ほろ苦い奇跡となってしまった。

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「6700万分の1」の奇跡だった。150ヤードの3番パー3。渋野と同じ98年生まれの黄金世代、山路は9番アイアンを振り抜く。ボールは一直線にピンに向かう。「もしかしたら入るかなという感じはあった」。5ヤード手前に落ちて転がり、カップイン。キャディーらと喜び合った。ここまでだったら、国内女子ツアーでは2大会に1回くらいの快挙だった。

ところが山路は続くパー3の7番でも再び魅せる。1度目より長い175ヤード。7番アイアンを握り、3番と同じくピン手前に落として転がし、2度目のホールインワンを達成。「両方見えました。最初に入っていたのでまた入ると思っていなくて。『怖い』って思いました」と驚きながら振り返った。

3発目を狙った15番と17番のパー3ではともに外したが、国内男女ツアーを通じて史上初の快挙を達成。20年富士通レディース第1ラウンドに続く自身通算3度目の達成は渋野らの2回を抜き、黄金世代最多にもなった。米ツアーでは06年に宮里優作がリノタホ・オープン第2日に51年ぶり史上2人目の達成を果たすなど世界で見ても数少ない記録。英国の保険会社によると、その確率は6700万分の1とされている。

一生に1度あるかもわからない記録を達成したが、最後まで表情は晴れなかった。2度のホールインワンで4つスコアを伸ばすも、通算4オーバーの148の75位で痛恨の予選落ち。5番ではOBを喫して1度目のホールインワンを果たしたボールを“紛失”。このホールをダブルボギーとするなど、波に乗りきれなかった。「ショットがいい中でドライバーが曲がってしまって、もったいない部分が多かった。予選は通りたかったので、複雑です」と声のトーンを下げた。

最終日のみパー3の各4ホールにホールインワンによる賞金800万円が設定されており、惜しくも1600万円は逃した。それでも主催のリゾートトラストはひとつめに10万円、新記録の2つ目のホールインワンには10倍の100万円の賞金を授与。計110万円の臨時収入には「そんなに頂けると思っていなかった」と再び目を丸くし、「これで黒字かな…。それはよかったです」と少しだけ表情を崩した。大記録達成を弾みに、次は悲願の初優勝を狙う。【松尾幸之介】

 

<山路晶のアラカルト>

◆生まれとサイズ 1998年(平10)9月10日生まれ。宮城県仙台市出身。166センチ、B型。

◆ゴルフ歴 8歳から始め、中学2年時に中嶋常幸主宰の「ヒルズゴルフ・トミーアカデミー」に入門。同学年の畑岡奈紗らと腕を磨く。18年ファイナルQTで34位に入り、19年から国内ツアーに参戦。同年にプロテストにも合格した。学生時代はテニスや水泳にも励むなど運動神経抜群。約250ヤード飛ばすドライバーを特徴としていたが、近年はお尻や体幹トレーニングの成果もあり、ショット精度も向上中。

◆父は名監督 父哲生氏は東北福祉大硬式野球部総監督を務める。大学時代は2年後輩に阪神の矢野監督、3年後輩に金本前監督がいた。

◆好物 すしのサーモン、さつまいも、海ぶどう。

 

<ホールインワンアラカルト>

◆確率 英国保険会社によると、1日に2度達成する確率は確率は6700万分の1とされている。サッカーくじtotoBIGの1等当選確率は約478万分の1、MEGABIGの1等は約1677万分の1(20年度実績)。

◆1日2度 米男子ツアーの06年8月リノタホオープン(米ネバダ州モントルー・クラブ)2日目に、宮里優作が7番(220ヤード)と12番(186ヤード)で達成。同ツアーでは51年ぶりの快挙だった。

◆同一年同一大会同一ホール 10年の日本男子ツアー、VanaH杯KBCオーガスタ第3日8番パー3(165ヤード)で、上井邦浩が、第1日に続いてホールインワン。史上初の快挙としてギネス認定された。

◆パー4で 98年中日クラウンズ(名古屋GC和合C)2日目1番(341ヤード)で中嶋常幸が達成、奇跡的なアルバトロス。

◆1日3度 76年に米フェニックス近郊のコースでアマチュアのハロルド・スナイダーさんが1ラウンド3回のエースを達成したという記録もある。