日本ツアー参戦10年目のジュビック・パグンサン(43=フィリピン)が初優勝を飾った。2位に3打差の首位スタートから6バーディー、2ボギーの68。通算17アンダー、199で逃げ切った。キャディーをつけず、手引きカートでなくバッグを担いで、使用クラブは規定より3本少ない「11本」だけ。世界的にも超異例のスタイルで、上位2人までの全英オープン出場権も手にした。

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軽量タイプのキャディーバッグを肩に担ぎ、パグンサンが最終18番グリーンにやってきた。ウイニングパットを沈め、白い歯を見せ、ニカッと笑った。「日本で2位は7回あったけど、やっと解放された」。来日10年目で、やっとその瞬間が訪れた。それも、初めてクラブを11本に絞ったスタイルで-。

コロナ禍のハウスキャディー不足などもあり、大会によってセルフプレーOKとなった。キャディーがいないなら、通常は手引きカートを使うが、パグンサンは担ぐ。

なぜ担ぐのか? 「カートだとグリーンを横切れないから、不便」。

なぜルール上限の14本でなく、11本なのか? 「ヘビーだし」。

担いだのは関西オープン、ゴルフパートナー・プロアマに続き3大会目だったが、今までは14本で疲れた。今回は初めて「最後までいいプレーをしたいので」と体力優先で11本に絞った。アイアンの3、4、6、8番を抜いて、3、4番の代役に19度のユーティリティーを入れた。

アイアンの番手が1つ空けば、通常約20ヤードのギャップが生まれる。その差を、1番手大きなクラブを抑えて打ったりして埋める。「フィリピンでは少ないクラブ本数で回ったりするから」。開催コースJFE瀬戸内海GCは、海に隣接し、風が名物でもある。「フィリピンが風が強いコースが多いし」。パグンサンが故郷で培った“技”に、同組で優勝を争った宮本勝昌は「クラブを減らすなんて、発想自体が無理。基本的に天才です」と舌を巻く。

コロナ禍で3月以来、故郷の妻、娘、息子と離ればなれの日が続く。「家族だけでなく、フィリピンの人がみんな健康で無事でいてほしい。コロナは本当に危険だからね」。家族に話が及ぶと神妙な顔を見せたパグンサンだが、ゴルフの話になれば笑顔になる。

全英オープンは12、14年以来3度目の挑戦。「まずちゃんと英国のビザを取らないとね。そして、全力を尽くして、勝つチャンスがあれば…」。世界ランクもフィリピンで1番手の398位から急浮上は間違いなく、東京五輪出場の可能性もある。「国の代表なんて名誉なこと。出てみたいね」と目を輝かせた。

そして、今後も「11本プレー」はあるのか? 「これから年をとっていくだけだから、またやるかもね」とニヤリ。ちなみに次戦の国内メジャー・日本ツアー選手権(茨城・宍戸ヒルズCC)はハウスキャディーを伴い、スタンダードな14本でプレーする。【加藤裕一】

<パグンサンの優勝クラブ>▼1W=キャロウェイ エピックSPEEDプロトタイプ(シャフト=グラファイトデザイン ツアーAD・XC-5、硬さX、長さ46インチ、ロフト角9度)▼3W=同 ローグ(13・5度)▼UT=同 ローグ(3U19度)▼アイアン=同 APEX PRO(5、7、9I、PW)▼ウエッジ=同 JAWS(50、52度)マックダディ4Xグラインド(58度)▼パター=タイトリスト スコッティキャメロン ファントムX T11プロトタイプ▼ボール=同 プロV1x