新世紀世代の笹生優花(19=ICTSI)が女子ゴルフのメジャー、全米女子オープン選手権を史上最年少の「19歳351日」で優勝した。連続ダブルボギーによる首位と6打差をはねのけ、通算4アンダーでもつれた畑岡奈紗との「日本人同士のプレーオフ」を制した。1977年全米女子プロ選手権の樋口久子、2019年全英女子オープンの渋野日向子に次ぐ日本女子3人目のメジャー制覇で、優勝賞金は100万ドル(約1億1000万円)。米ツアー5年シードを獲得し、即参戦する。

   ◇   ◇   ◇

さすがに泣いた。やっと泣けた。現地インタビュアーに家族への思いを聞かれると、笹生が右手で両目を覆った。「家族に…家族だけじゃないんです。スポンサーの方、フィリピンと日本のファンの皆さんに…」。世界最高峰トーナメントの4日間。「緊張は誰にでもある。でも、プレッシャーは違う。私はそれを受け入れたくないから」と公言し、平常心のまま世界一を目指そうとした19歳から、ゴルファーの仮面がぽろりとはがれた。

実に6打差からカムバックした。2番パー4でドライバーを大きく右にプッシュ、深いラフに負けて4オン2パット。3番パー3はバンカーから2オンさせたが3パット。今大会で1度もなかったダブルボギーを連続で喫した。5番を終え、首位トンプソンとは6打差。絶望的な状況で、国内でも帯同キャディーを委ねるライオネル・マテチュック氏の言葉が支えになった。「まだホールはたくさんある。大丈夫。自信を持って」-。7番以降は3バーディー、1ボギーだ。

夢のようなプレーオフがあった。同じメジャー制覇の夢を追い、畑岡と日本人同士の一騎打ち。最初の2ホール・プレーオフはともに譲らず、サドンデスで9番パー4へ。左ラフから残り109ヤード、スピンが利かないことを踏まえ、48度のウエッジで花道からランを使って、ピン前3メートル。バーディーパットを決める。大会75ホール目で、初めてガッツポーズを見せた。

父正和さん(63)は号泣した。「夢をかなえさせるのが目的だったから…」。小学生だった娘の両足に1・5キロの重りを巻いた。娘は風呂、睡眠時、ショット練習を除き、肌身離さなかった。ドラマ化もされた昭和のスポ根マンガ「柔道一直線」で、主役・一条直也が鉄ゲタを履く姿をマネた下半身強化。昭和的スパルタの二人三脚で貫いて“女ウッズ”の異名を取るパワー・ゴルフを身につけた。

「19歳351日」。76回の大会史上最年少優勝を、笹生は「私の夢は世界一になること、全米オープンに勝つことでしたが、まさか今週、そんなことが起きるとは」と言う。米ツアーの5年シードを得た。もうQスクール(予選会)受験は必要ない。「もっともっと上を目指し、頑張ります」。世界最高峰競技を制し、世界最高峰ツアーへ。驚異の19歳は海を渡る。

<「心が震えた」祝福の嵐/全米女子OP・笹生優花快挙Vまとめはこちら>ーー

◆全米女子オープン選手権 全米女子プロ選手権、ANAインスピレーション、全英女子オープン、エビアン選手権も含めメジャー5大会の中で伝統、権威両面で最高峰の大会。優勝賞金は20年大会から100万ドルとなり、女子ゴルフで初めて“大台”を突破。第1回は1946年で、ウエスタンオープン(30~67年)タイトルホルダーズ選手権(37~42、46~66、72年)より遅いが、現行5大会で最古。世界ランクなどによる出場権のほか、世界各地で予選会を行い、今年は1595人がエントリー。