渋野日向子(22=サントリー)は、あきらめない。ゴルフの全米女子プロ選手権(24日開幕)に向けて22日、会場の米ジョージア州アトランタ・アスレチック・クラブで練習。大会後に発表される28日付世界ランキングに基づく五輪ランキングで、東京五輪代表が決まる。原則、各国・地域で2人まで五輪切符を手にするが、日本代表争いで現在は4番手。2番手の稲見萌寧を無条件で逆転するには、今大会で2位以上が求められる逆境にあって、メジャー2勝目を目指す決心がついた。

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現実的な自分を封じ込めて、渋野はあえて高い目標を口にした。「オリンピックの選手になるためには、優勝するしかないくらいの勢いだと思う。できないと言ったら『最初から諦めとるやん』ってなる。最大限の結果を出せるようにしたい」。本音は、この言葉の直前に「オリンピックを意識できるほど余裕がない」と漏らしている。それでも応援してくれる人のため退路を断ち、19年全英女子オープンに続く、メジャー2勝目を目指すと宣言した。

今年はトップ10入りなしと、成績こそ伴っていないが、米ツアーに参戦中のこの3カ月で「ショットは日本を出る前よりも精度は高くなった。自信も、ちょっとずつ持てるようになってきた」と、成長を実感している。何よりも19年に全英女王となり、20年には最終的に4位ながら、全米女子オープンで第2日から最終日の前半まで首位。大舞台の強さは折り紙付きだ。

日本代表候補の世界ランキングは、畑岡が11位、稲見が25位、古江が28位、そして渋野は31位。畑岡は当確で、もう1枠を3人で争う。渋野が2番手に浮上するには、今大会で2位以上が求められる。ただ米国滞在中に松山のマスターズ、笹生の全米女子オープン優勝をテレビ観戦し「マジでしびれて、自分もすごいドキドキしながら見ていた。自分ももっと頑張りたい」と力を得た。同時に「自分の過去が薄れていくのが、ちょっと安心する。(注目が)そっちに行け、みたいな」と、重圧から解放された感覚もある。メジャーで再び頂点を争い、大逆転で五輪へ。渋野が描く最高のシナリオは、日本中に興奮をもたらすことになる。

◆女子ゴルフの東京五輪代表選考 6月28日付の世界ランキングに基づく、五輪ランキングで出場60人が決まる。各国上位2人に出場権が与えられ、五輪ランキング15位以内に3人以上いる国は、最大4人まで出場権を得る。最新世界ランキングで9位の笹生は、母の母国フィリピン代表で出場の意向。日本代表候補は11位の畑岡が最上位で、出場権獲得は確実。25位の稲見、28位の古江、31位の渋野で2枠目を争っている。

◆稲見、古江、渋野の五輪出場条件

▽稲見(WR25位) 古江が優勝を逃し、渋野が単独6位以下なら五輪決定。単独3位以上なら古江が優勝しても上回る。ただし渋野が単独2位以上の場合のみ、優勝でも五輪逃す。

▽古江(WR28位) 優勝が最低条件。さらに稲見が単独4位以下、渋野が単独5位以下で五輪決定。

▽渋野(WR31位) (1)単独2位以上なら無条件で五輪決定(2)古江が優勝し、稲見が単独4位以下の場合、単独4位以上で五輪決定(3)稲見が14位以下、古江が2位以下の場合、単独5位以上で五輪決定。

※稲見と古江はアース・モンダミン・カップ、渋野は全米女子プロ選手権に出場。アース・モンダミン・カップの優勝が19ポイントの場合。WRは世界ランキング。