服部真夕(33=朝日インテック)が涙の復活優勝を飾った。首位スタートから69をマークし、通算9アンダー、279。今季ステップアップツアー3勝のリ・ハナ(韓国)とのマッチレースを3打差で逃げ切った。優勝は下部ながら、ツアー5勝目の15年CATレディース以来6年ぶり。アプローチイップスに苦しみ、18年にシード落ちした実力者が“左打ちの寄せ”を取り入れ、復活の階段を1つ上った。

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最終18番グリーンで見せた笑顔が、中継局インタビューで泣き顔に変わった。6年ぶりの優勝。服部の表情が見る間にゆがむ。「…本当に…うれしいです…すみません」。おえつで言葉が続かなくなった。

19歳で受けた07年プロテストに合格、その年にツアー出場12戦でシードを決めた。パーオン率70%前後のショットを武器に15年までに5勝した。“次代のエース”だった。

ところが、14年頃からアプローチが変になった。ちゃっくり、トップとビギナーのようなミスが出る。ショットも乱れた。18年には11年間も守ってきた賞金シードを手放した。

「このまま普通にゴルフができなくなるんじゃないか?」。トッププロと思えぬ不安と絶望。19年オフ、帯同キャディーの「左でやってみたら」という一言がきっかけだ。実家のある名古屋市内の量販店「GOLF5」で56、58度の左用ウエッジを2本、3万円弱で買った。ショットは後輩プロの大江香織の助言が生きた。「そこまででいいんですよ」-。フルショットせず、フィニッシュを取らない。7、8分程度の“ライン出し”のようなスイングに活路を見いだした。

スランプを乗り越え、たくましさを見せた最終日だった。3、8番のパー3で20ヤードのアプローチに“左の56度”を使い、寄せワンのパー。お手本のようなピッチ&ランを見せ、勝利の流れを作った。新たなスタイルで、5バーディー、2ボギーの69を作った。

昨年6月のアース・モンダミンカップ。ツアーで“左の寄せ”を初めて試すと中継を見たファンから「自分もアプローチで悩んでたけど、そういう考え方もありなんですね」とメールをもらった。「うれしかった」という服部は結果を出して、胸を張る。「賛否両論はあると思います。でも、これが私のスタイルです」-。

19年に初出場したステップアップツアー。同ツアー史上初の4日間大会を制し、同ツアー史上最高額の優勝720万円を手にした。賞金ランクは886万7142円で3位浮上。残り7戦。来季ツアー前半戦出場権が得られる同ランク2位以上が見えた。「まずは目標のステップアップツアーで、しかも4日間で勝てたので自信になりました。早くレギュラーツアーに戻れるよう頑張ります」。空白の6年間が埋まった。【加藤裕一】