渋野日向子(22=サントリー)が近々、派手な復活を見せるんじゃないか。7月31日に終了した楽天スーパー・レディースは、優勝スコアが通算18アンダーの伸ばし合いについていけず、7アンダーの29位に終わった。結果だけを見れば「なんで?」となるし、記者自身もプロではないから断言はできないのだが…。3月末のアクサ・レディース以来4カ月ぶりにプレーを生で見ての実感だ。

飛距離が戻った。

渋野が言う。「全体的に見ると明らかに3月、4月ごろよりは、絶対に伸びていると思う。もうマン振りできる。あの頃はなかなかマン振りできなかったけど、振れる状態になってきた。だから距離も伸びてると思うし、普通に振っても3月とかより10ヤード以上は絶対に伸びてると思う。それプラス、あの~(精度、再現性?)はい。そうです」。

「振れる状態になってきた」という言葉が、楽しみだ。

昨年末からの大胆なスイング改造。トップの位置は浅く、スイングプレーンはフラットでコンパクトに-。「ショットの精度、スイングの再現性を高めるため」と言い、当面の飛距離ダウンも甘受して踏み切った。渋野に助言したとされ、時期を同じくして良く似たスイングに取り組んでいた石川遼も「理屈では絶対に落ちます」と話していた。

4カ月ぶりに見た渋野は、スムーズさが違った。春先は「ここをこうやって」という風に、ショット前のルーティンでテークバック、トップの位置、インパクトへの軌道をいちいちチェックしていた。低い球、高い球、ドロー、フェードといろんな球筋が出て「あれは意識的なものか?」と聞くと「いえ、まだバラバラなだけです」と苦笑いしていた。

それが消えた。ルーティンはアドレスに入って、大きめのワッグルを1度入れるだけ。ぎこちなさがない。球筋も基本は春先より高く、ストレートに近いドローになった。大きく変えたスイングがなじんできた。だから歯切れよく振り切れて、ショット自体も安定する。そう解釈できるのではないか。

楽天スーパー・レディースの最終日、渋野は岡山・作陽高の後輩、石川怜奈と同組で回った。飛ばし屋の石川に「1度だけでもオーバー・ドライブする」と宣言し、最終18番でかなえてみせた。「振りちぎった」と表現したティーショットの距離は281ヤード。ちなみに同日、同ホールで同じ黄金世代の飛ばし屋・原英莉花は272ヤード、勝みなみは279ヤード、ツアー屈指の飛ばし屋・穴井詩は渋野と同じ281ヤードだった。

渋野の次戦はAIG全英女子オープン(8月19日開幕、カーヌスティーGL)になる。昨年8月の全英は本人いわく「撃沈」でロイヤルトルーンGCというリンクスの洗礼を浴び、通算12オーバーの105位で予選落ちに終わった。

「なんか昨年よりはいい状態で臨めるんじゃないかと考えてます。優勝争いができるとは思ってないけど、今の自分のゴルフができれば、予選通過は全然できると思っているので」。

ゴルフは飛距離だけじゃない。課題のアプローチはまだまだだろうし、パットもブレークした19年にバンバン決まった「壁ドン」のようにうまくいってはいない。しかし、戦うベースは整った。19年に優勝したメジャーで、一皮むけた渋野日向子が見たい。【加藤裕一】