小祝さくら(23=ニトリ)は休まないゴルファーだった。

その小祝がNEC軽井沢72の優勝会見で、大会前の1週間の休みが優勝の大きな要因になったと明かした。1週間の休みは、本人の意思で取ったものではなく、たまたま東京五輪と重なったためだった。

今年は開幕戦で優勝し、第3戦のTポイント×ENEOSで2勝目。快調なスタートダッシュを見せたが、3月以降は上位に顔は出すものの優勝からは遠ざかっていた。調子を落とし、自信もなくしていた中での休みが、小祝を変えた。1週間でショット、パットを見直し、自分と向き合い、5カ月ぶり優勝の原動力とした。「1週間の練習って大きいんです。自信になりました」と小祝は言った。

五輪の前には師事する辻村明志コーチからも、後半戦の賞金女王争いに向けて、調整のため1試合を休むようにアドバイスされていた。「休む気はなかったけど、10月のスタンレー・レディースを休むことにしました」。渋々休みを受け入れた小祝だったが、今回の休みを経ての優勝で、コーチの考えが腹落ちしたようだった。

小祝が試合に出続けたのは、自分に自信が持てなかったからだ。黄金世代で畑岡奈紗や勝みなみらの背中を追いかけてきた。彼女たちに追いつくために、試合に出続け、ツアー6勝の畑岡に次ぐ5勝を挙げた。「アマチュアのときはそんなに上手じゃなくても、ここまで来れば自分の自信になる」と胸を張った。

試合に出ることが直接収入に結び付くプロのアスリートが1試合でも休むことは勇気がいることだ。それでも、休養をとることで筋肉を効率よく成長させる「超回復」の重要性が、最近のスポーツ界では指摘されている。体だけでなく、心の超回復もアスリートにとっては必要なことで、今回の小祝の優勝はそれを証明している。

休養に関しては、米女子ツアーで活躍する畑岡奈紗も、2年目、3年目から自分の調子やメジャーとの兼ね合いを考えて取るようになってきた。1年目から2年目にかけてはやはり全試合出場にこだわっていたようだが、ナショナルチーム時代から指導を受けているガレス・ジョーンズ・ヘッドコーチのアドバイスを受け、休養の必要性を自覚したようだ。

試合に出続けていれば、鉄人ともてはやされもするが、プロのアスリートとして休むということは、その後の競技人生を左右する大きな決断になることもあるのだ。【桝田朗】