新型コロナウイルス感染症の拡大で、政府の危機管理能力が問われている。スポーツでも同じで、予想される環境や状況の変化にいかに対応できるかが、勝負の分かれ目となる。22日に終わった女子ゴルフのCATレディース(神奈川・大箱根CC)は、まさに危機管理能力の試される大会となった。

最終日は雨に加え、最大風速15・4メートル(正午時点)を記録する荒れた環境の中でのプレーとなった。第1ラウンドから首位を守った東京五輪銀メダリストの稲見萌寧(22=都築電気)は、10アンダーの単独首位でスタート。午前9時50分に1番ティーから出て、前半は2バーディーと快調に優勝へ伸ばしていた。1打差2位の高橋彩華、2打差3位の吉田優利が先に崩れ、一時は首位と5打差も開く楽勝ムードだった。

しかし、稲見は9番パー5のティーショットで突風にあおられ、池ポチャ。なんとかボギーに収めたが、この時間がちょうど風が1番強い時間帯だった。そこから10番、11番、12番と4連続ボギー。プロになって初めて経験する4連続ボギーで動揺し、その後は立て直せず、終盤の3連続ボギーで小祝に逆転を許した。

今季6勝を挙げ、圧倒的な強さを誇る稲見でさえ、強風の対応に「うまくいかなかった」とこぼした。ほとんどの選手がスコアを落とし、アンダーパーで回ったのはトップ10に入った選手の中ではわずか3人。その1人が優勝した小祝さくら(23=ニトリ)だった。

優勝会見で小祝は、風が強い場合のショットの打ち方を「スリークオーターで強い球を打つ練習をしてきた」と明かした。試合前には「風が強ければ自分にもチャンスがないわけじゃない。風が強い分プラスに考えることができた」と話した。荒天の試合が好きという小祝は、前週に大雨で風も強かったNEC軽井沢72を制したばかりだ。

男子でも星野陸也(25=フリー)のように荒天に強い選手がいる。人一倍研究熱心な星野も、天候にあわせショットを打ち分ける練習をして、周りの選手が苦しむ試合で結果を出してきた。天候に左右されるゴルフは危機管理能力が試される競技であり、気候変動の影響で今後さらにその重要性が増していくと思う。【桝田朗】