山内社長の部屋には端から端までズラリとパターが並んでいる。8月のNEC軽井沢72で、ツアー5勝目を挙げた北広島市出身の小祝さくら(23=ニトリ)が使用していたのが同社制作のパターだった。「私がこれまで培ってきた技術の集大成をパターにしようと思って作った。北海道の人が日本で1番になるために、それがさくら自身の手となる道具となれば」。年間獲得賞金2位につけ初の賞金女王を狙う小祝への思いが込められている。

今年7月、苫小牧で行われたニッポンハム・レディースで、小祝のラウンドを全ホール視察し目利きでフィッティングした。デザインに関して「どんなパターがいい?」と聞くと、小祝からは「夢かわいいパターがいい」と若い女性ならではの表現で要望された。

一般的なパターヘッドは打点に目印としてラインやドットが描かれているが、その部分を星の形に加工した。「車でいうとスペシャルカスタムオーダーってとこかな。モチベーションが上がる、その効果を入れたのがこのパター」。小祝が里帰りした8月に提供。「渡した瞬間、ずっとニヤニヤしてたよ」と、“夢かわいい”パターに満足していた。ちなみに、もし小祝のパターとまったく同じ製品が市販されたら、価格は330万円にもなるという。

会社は金属製品の加工などを手掛け、山内社長がパター制作を始めたのは5年前のことだった。「お客様への恩返し。技術の集大成をパターに表現して、これでゴルフを楽しんでくださいという贈呈用で考えていた」。講演活動や工場見学の対応など多忙な業務の合間を縫って、制作に取り組んできた。

やっと自社ブランドのオリジナルパターが完成し、今年4月から一般販売を開始した。最低でも100万円超えと高額だが、小祝効果で反響は大きい。「北海道から全国、世界へ。ものづくりのワールド山内として頑張っていきたい」と、これからも走り続ける。【山崎純一】

◆山内雄矢(やまうち・ゆうや)1977年(昭52)4月19日、札幌市生まれ。99年4月ワールド山内に入社、16年に代表取締役に就任した。27歳でゴルフを始め、趣味はスノーモービル。家族は妻と1男1女。