松山英樹(29=LEXUS)が“凱旋(がいせん)試合”で、米ツアー通算7勝目を射程にとらえる2位発進した。6バーディー、ボギーなしの64で6アンダー。7アンダーで首位の岩田寛(40=フリー)を1打差追う。新型コロナウイルス感染症対策で今夏の東京五輪は無観客開催。日本のファンの前でプレーするのは2年ぶりだった。マスターズ覇者として、応援に後押しされ、プレーで魅了した。

    ◇    ◇    ◇

ファンの声援と拍手が、決して状態が良いとはいえない松山を後押しした。2年ぶりに日本でプレーする松山見たさに、何重にも人垣ができた1番パー4のティーグラウンド。「カレント(=現在の)マスターズチャンピオン」の肩書とともに名前がコールされると、大きな拍手で迎えられた。ティーショットは左ラフだったが、第2打を3メートルにつけ、バーディー発進。新型コロナ対策で「声援なしでお願いします」と呼び掛けられ、スタート時点は拍手にとどめていた観衆が、思わず歓声を挙げた。

今大会の観衆は各日5000人までと制限された。初開催で、日本で前回開催された19年大会第1日の1万8536人には及ばなかったが、上限に迫る4468人が平日の昼から駆けつけた。東京五輪金メダルのシャウフェレ(米国)、銅メダルの潘政■(■は王ヘンに宗)(台湾)と回った松山の組は圧倒的人気で、観衆の過半数を引き連れた。「たくさんギャラリーの方が来てくれた。いいプレーをしないといけないんだろうなと、プレッシャーみたいなものも感じたけど、それが逆にいい方向にいった」。ファンの期待に応えたい思いが、プレーに磨きをかけた。

バーディー発進は、タイガー・ウッズ(米国)に敗れて2位だった、19年大会を思い出させた。「スタート(1番)が一昨年はバーディーで、今年もバーディーを取れた。すごく余裕ができたと思う」。前日20日には「マスターズを10としたら1もない状態」と、ショット、パットとも不調だとしていた。だが2年前と同じ第1日の1番で、くしくも同じく3メートルのパットを決めてバーディー。大声援に右手を挙げると「うれしかったし『日本でやっているんだな』と、あらためて実感した」。感謝や雪辱など、さまざまな思いが、最後までボギーなしと集中力を途切れさせなかった。

その後も5つのバーディーを重ね、首位と1打差で第2日を迎える流れまで2年前と同じだ。「いいプレーができたかなと思う。流れよくプレーできた」。最終日まで優勝争いした2年前のような感覚になってきた。あと1つだけ順位を上げる新境地を、残る3日間で探していく。【高田文太】