今季断トツの9勝を挙げた稲見萌寧(22=都築電気)が、初の賞金女王に輝いた。

【賞金ランキング】国内女子>

賞金ランキング1位で臨んだ今季最終戦の国内メジャーを、5人が並んだ9位で終えた。4バーディー、3ボギー、1ダブルボギーの73で回り、通算イーブンパー、288。スタート時の15位では、賞金2位の古江彩佳に逆転される可能性が高かったが、中盤から盛り返し、賞金女王を決めると涙を流して喜んだ。大逆転で出場権をつかんだ東京五輪では銀メダル。今季の女子ゴルフ界の顔は、最後まで勝負強かった。

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昨年と統合された史上最長シーズンの最後は、涙をこらえ切れなかった。ホールアウトしていた稲見は、最終組の古江のプレーを、クラブハウスで見守った。古江が優勝を逃し、初の賞金女王が決まると、キャディーを務めた奥嶋誠昭コーチ(41)から、涙ながらに祝福された。「泣くつもりはなかったけど、先に泣かれちゃって、もらい泣きした」。長い重圧から解放され、笑って振り返った。

最終戦の最終日まで苦しんだ。1番でバーディー発進も、3番パー4で痛恨のダブルボギー。直後の4番パー4も3パットのボギー。古江がスタート時と同じ単独2位で終えた場合、単独13位以上でなければ逆転を許す。「後半はずっと気にしていた」と、古江のスコアを確認。9、10番の連続バーディーで盛り返し「最後はメチャクチャ頑張った」と、17番で伸ばして9位に浮上。初の賞金女王を引き寄せた。

「1人で抱え込んでいて苦しいです」。第2ラウンド終了後、上位進出の糸口が見えずに悩み、奥嶋コーチに1通のメール

を送った。後半2日間は奥嶋コーチと意見を戦わせ、一打にこだわった。世界ランキングを、年明け時点で日本勢5番手から2番手になって、大逆転で五輪代表入り。今年だけでツアー8勝、五輪で銀メダルを獲得も素顔は22歳の女子大生。奥嶋コーチも「本当は弱い子」という。

事実、順風満帆に見えるシーズンも「今年は2回(心が)折れた」。五輪代表が決まる直前に2戦連続予選落ち。代表入りは米ツアーで戦う渋野の結果に委ねられ「実力で取れなかった」と恥じた。10月下旬には腰痛で歩行も困難に。18ホール回れば賞金が加算される最終日に棄権。この日「正直、賞金女王を諦めていた」と、当時の心境を吐露。耐え抜いた中での栄光だった。

黄金世代とプラチナ世代に挟まれた99年生まれだが「世代ではなく自分がダイヤモンドになる」と、以前誓っていた。この日は「1回だけダイヤモンドになっても意味がない。ずっと輝き続けたい。最強のプロゴルファーになる」。“稲見時代”到来。そう予感させるには十分すぎるシーズンとなった。【高田文太】

◆稲見萌寧(いなみ・もね)1999年(平11)7月29日、東京・豊島区生まれ。9歳でゴルフを始め、16年ナショナルチーム入り。18年プロテストに1発合格。19年センチュリー21レディースでツアー初優勝。今季9勝を含む通算10勝。22歳108日の通算10勝は宮里藍に次ぐ若さ。今夏の東京五輪で日本ゴルフ界初メダルとなる銀メダルを獲得。166センチ。血液型A。

【成績】JLPGAツアー選手権リコー杯―>