国内女子ツアーの開幕戦ダイキン・オーキッド・レディースは新世紀世代・西郷真央の初優勝に沸いたが、西郷と同学年のあるアマチュアも存在感を見せた。通算4アンダー、10位でローアマを獲得した荒川怜郁(れいか、20=三重・中部学院大)だ。

「飛距離です。私にはそれしかありません」。飛ばす。170センチの身長を生かしたスイングはダイナミックで、今大会はドライビングディスタンスの計測がなかったため、正確な数値は不明だが、過去には「平均飛距離280ヤード」とする報道があった。280は正直眉唾だし、そんな女子はまずいないから“盛りすぎ”と考えるべきだが、飛ぶことは間違いない。しかも高弾道、キャリーで稼ぐスタイルだから、真の飛ばし屋になる可能性を秘める。

一方で粗い。飛距離を生かし、パーオン率73・62%で全体5位の数値を残しながら、ボギー13個のうち5個が3パット。グリーン、ショートゲームに課題があるのは間違いない。

将来は破壊的なパワーゴルファーに…と期待を抱かせるとともに、コメントがまたパワフルだった。

ツアー出場3戦目、初めて会見に呼ばれた荒川は初々しく、緊張しながら質問に答えてくれた。

沖縄出身で県立コザ高3年だった19年にプロテストを受験した。西郷、笹生優花、山下美夢有の新世紀トリオと同学年同期合格を目指し、1次(5地区開催)はC地区3位で突破したものの、最終前の2次(3地区開催)で落ちた。

「落ちたことより、1次で3位だったことが驚きです。当時ベストスコア68だったのに、69が出たりして。“そりゃ落ちるよね”って思いました」

力不足を痛感したから、プロテスト浪人ではなく、大学に進んだ。

「最初は沖縄の大学に行くつもりでした。でも…言っちゃっていいんですかね…その大学で学費免除が半額か全額かという話になって“来ると決まれば、半額でも来てもらわないと困る”と…。私は“半額だったら無理だなあ”と思っていたら、知人の知人が(中部学院大の)監督さんで“なら全額免除にしてあげるから、ウチに来なさいよ”と言ってくださって」。

中部学院大では在学中でも、プロテスト受験を認めてくれているそうだ。

「昨年、調子が良くて“挑戦してもいいよ”という感じはあったんですが、1年生の時(20年)は(コロナ禍で)試合が全然なかったんです。監督さんが私を拾ってくれたのに、何の恩返しも貢献もせずに、それはダメだと思いました」。

在学中にプロテスト再挑戦、合格したとしても、大学は卒業したい。

「プロになって頑張っても、30歳ぐらいまでかもしれない。そうなったら、先の人生の方が長い。大学を出た資格があった方がいいじゃないですか。だから(大学の)理事長さんには(プロになっても)“卒業させてください”とお願いしています」。

こんな感じで一から十まで丁寧に、事細かく答えてくれる。聞いてもいない、お金の話までしゃべらなくていいのに…。荒川のあふれる素直さ、純真さに会見場は笑いと温かい空気でいっぱいだった。

ゴルフは5歳から始めた。きっかけはトーナメント中継をテレビで見たこと。誰が活躍、優勝したかは覚えていないが、何を思ったかは覚えている。

「穴に(ボールを)入れるだけで、こんなにお金がもらえるんだって」。

何と原始的、根源的なプロスポーツを目指す動機ではないか。今後は主催者推薦でツアー出場も増えるだろう。大学3年の今年にもプロテスト再挑戦があるかもしれない。プレーも人柄も追いかけたい若手が現れた。【加藤裕一】