渡辺彩香(28=大東建託)がミセス初Vとなる約2年ぶりのツアー通算5勝目を挙げた。原英莉花、小祝さくらと同じ最終日最終組で首位から出て71。通算11アンダーで高橋彩華とのプレーオフに入ると、2ホール目に15メートルのバーディーパットを放り込んで勝負を決めた。黄金世代3人を振り切った28歳は柔道家の夫・小林悠輔(28)と歓喜のハグを交わした。

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ほぼ上限いっぱいの大ギャラリー、4942人が驚いた。プレーオフ2ホール目の18番グリーン。渡辺が思いを込めたボールが、上りフックラインに見事に乗った。「絶対にショートだけはしない」と念じた。外れたら1メートルはオーバーする勢いで、15メートル先のカップに飛び込んだ。

6メートルを外した高橋とのあいさつ後、グリーン横で柔道家の夫悠輔とハグをした。「海外選手とかよくやるじゃないですか? ひそかな夢だったんで」-。昨年2月に結婚した同じアスリートの夫の前で、初めての優勝だった。

前週は今季10戦目で初の予選落ちだった。最終日最終組が3度あって結果が出ない序盤戦…。もどかしさを吐き出すと夫が言った。

「俺からすれば、それだけ悩めるのって幸せと思うけどね」。

現役の柔道家ではあるが、日本代表争いなどの第一線からはすでに1歩引いている。違う立ち位置の一言が心に刺さった。

「ガンガン行こうと思っていた」というこの日、5番までに4バーディーを奪った。1番パー5はほぼ2オン。2番パー3は左奥ピンの左をショットで刺した。4番パー5はドライバーショットで原、小祝を30ヤード以上置き去りにした。手前エッジまで約270ヤードの5番パー4は1オンを狙い、ピン左サイドのラフに運んだ。

8番ではOBからダブルボギーをたたいたが、ブレなかった。「勝っても負けても1つも後悔がない1日にする」と決めていた。

原、小祝、高橋ら黄金世代より、28歳が大ギャラリーをどよめかした。「日本ツアーでやっている以上、やっぱり日本で1番になりたい」。狙うは賞金女王、ポイント争いのメルセデス・ランク1位。ミセスプロが堂々と夢を口にした。【加藤裕一】

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