渋野日向子(23=サントリー)が育った岡山県瀬戸内市の長船カントリークラブでは、ジュニア時代を知る人が1打差3位の大健闘をたたえた。

藤原成矢(なるや)支配人(49)は「ここ数日はメンバーさんや、ここで(渋野が)練習していたのを知る人たちが、『今日はどうじゃろ? 明日はどうなるじゃろ?』と気にかけていました。グラウンドゴルフの爺ちゃん、婆ちゃんまでが『シブコはどうじゃ?』と話題にするほど。負けん気の強い子ですから勝ちたかったとは思いますが、よう頑張った」とねぎらった。

河川敷の長船CCには「シブコの木」がある。

9番バックティーから240ヤードの地点に茂る松の木のことだ。高さ約20メートル、横幅約10メートルの大木。580ヤードのパー5のため、第1打で越えないと第2打で障害になる。渋野は小学生の頃からその木をめがけてひたすら打ち続け、中学に入った頃にようやく越えるようになった。力強いショットは、そうやって磨かれた。

まさしく原点の地。

子供の頃からよく食べたという鳥の唐揚げとオムライスが「シブコセット」として出されていた。今年の正月明けにも練習がてら、あいさつに訪れたという。

19年にメジャー初制覇した際には「スマイルシンデレラ」として話題になった。ただ、昔は感情を表に出すタイプだったという。

同支配人は「子供の頃は試合で(スコアが)悪いと、周りに分かるくらい顔に出ていました。自分に腹が立って、ふてくされてメンバーさんに叱られたり。今でも悪いのを引きずったまま次のホールに行ったなあ、と思うことがあります」と笑いながら振り返った。

3年前は勢いで勝った優勝。今回はゴルフの怖さを知った上で、最後まで戦い抜いた堂々の3位だった。

「前回と比べて見ていました。イケイケどんどんだったのが、3年も経てば人生と同じでいろいろある。特にパットは3年前は全部オーバーでしたが、(今回は)守りに入ったり、打ち切れずにショートするのもあった。今までの経験があって、怖さを知り、打ち切れんかったのが1番でしょう。ショットはだいぶ戻ってきて、自信が持てるようになったように見えました。アプローチは100ヤードくらいのが寄っていたので、相当練習したんでしょうね」

メジャー2勝目まで、あと1歩-。涙を流しながら「すごく悔しいです」と漏らした姿は印象的だった。

ただ、渋野の活躍は、確かに故郷の人々に届いた。【益子浩一】