昨夏の全米女子アマチュアゴルフ選手権で日本人37年ぶり2人目の優勝を果たした馬場咲希(17=東京・代々木高2年)が、2023年はメジャー4大会に照準を定めた。オーストラリアでの始動を前にした今月上旬、日刊スポーツ新聞社を訪れ、新年の目標などを語った。昨夏の快挙で出場権を得た4月のシェブロン選手権(米テキサス州)、7月の全米女子オープン(米カリフォルニア州)とエビアン選手権(フランス)、8月のAIG全英女子オープン(英国)のメジャー4大会は全て出場すると約束。その上で、4戦ともに予選通過と上位進出を目標に掲げた。【取材・構成=高田文太、近藤由美子】

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初めて出場した海外の試合は、昨年の全米女子オープンだった。ジュニアやアマチュアの枠を飛び越え、いきなり世界最高峰の舞台に挑んだ馬場。ただ、本人にそんな認識はなかった。インタビューで経歴を確認する中で「そういえば、初めての海外の試合が去年の全米女子オープンでした。今、気付きました」と、笑い飛ばした。その全米女子オープンは日本人アマチュアとして8年ぶりに予選通過。2カ月後、日本人37年ぶりに全米女子アマを制して一躍、時の人となった。

海外の試合でも気後れしない馬場が今年、メジャー4大会に挑む。5大メジャーのうち、プロしか出場権のない全米女子プロ選手権以外、出場権を獲得した。

馬場 メジャーに出られるアマチュアは少ない中で、4試合も出られる。大変なことなんだなということを自覚して、しっかりと準備したい。去年の全米女子オープンの時に、2日間でカットされるの(予選落ち)と、4日間プレーできるのは全然違うなと感じました。4試合とも4日間プレーしたいですね。特に楽しみにしているのは全米女子オープン。(会場の)ペブルビーチ・リンクスはあこがれの地。PGA(米男子ツアー)の試合をやっているのを見て、そこに私も出られるのがすごい楽しみ。

名門コースでのプレーという点では、もう1つ、とっておきがある。全米女子アマ優勝で出場権を得たのは、メジャー4試合と、オーガスタ・ナショナル女子アマチュア選手権。大会名通り、毎年マスターズを開催する、オーガスタ・ナショナルGCで決勝を行う。

馬場 まず予選を通過しないとオーガスタ(・ナショナルGC)で試合ができない。そこでプレーできるように頑張りたい。

一方で、全米女子アマ選手権の2連覇は、メジャー4試合に照準を合わせる以上、事実上、不可能となる見通しだ。昨年もメジャーの1つ、AIG全英女子オープンと全米女子アマの試合日程が重複。今年も同様か、せいぜい1週間違いなど、英米間の移動を伴う強行日程の可能性が高い。すでに馬場は、メジャーを優先することを決めている。

馬場 実は全米女子アマのトロフィーは1年後に返却しないといけなくて。どうしよう(笑い)。

女王ならではの悩みがある。その全米女子アマは、36ホールで争うマッチプレー方式の決勝で、歴代3番目の大差となる11アンド9(9ホールを残して11アップ)。当時も振り返った

馬場 すごい楽しかったです。(緊張は)正直、あんまりしていなかったかも。緊張よりも楽しさが上回っていた感じです。

自らを「笑いのツボが浅いかもしれない」と評し、よく笑う姿にアマチュアだがファンは急増中だ。それでも素顔は17歳の高校生。自宅では愛犬のトイプードルと過ごす時間が楽しい。

馬場 2、3年前から飼っているんですけど、もうメチャクチャかわいい! 試合が続いて久しぶりに帰った時に、迎えに来てくれると癒やされます。あと最近は、ゲーム実況のYouTubeをよく見ます。メチャクチャ面白くて、爆笑しながら見ています。好きな芸能人は『かまいたち』の濱家さん! 何か面白いし、かわいくないですか?

東京都庁で小池百合子都知事から表彰を受けた際、出身の東京・日野市でよく行く店を問われると、チェーン店の「マクドナルド」や「サイゼリヤ」と回答。いたって普通の17歳でもある。18歳となる今年、ようやく主催者推薦を除き、国内ツアー出場に必要なプロテストを受験可能となる。

馬場 プロテストは、通らないとプロとして何もできないので、やっぱり通りたいです。ただ「通らなきゃ」というふうに、思わないようにしたいです。

勝負は時の運。大舞台を経験したからこそ、その時の調子の良しあしで、結果が大きく左右されると知っている。今秋のプロテストに合格することを考え過ぎるよりも、まずはメジャー4大会など、目の前の試合に全力を尽くし、楽しむことが大事と知っている。

「1年前は想像もしていなかった」というほど活躍した22年。再び自身の予想を飛び越え、メジャーでの優勝争いの可能性も十分ある。175センチの長身から繰り出す、270ヤード超のドライバーショットは、今すぐ米ツアーも見据えられる潜在能力。さらに成長した馬場が、23年の日本女子ゴルフ界を再び盛り上げる。

▼日本女子プロゴルフ協会(JLPGA)小林浩美会長 馬場さんのストロングポイントは飛距離があり、大きなゴルフで思い切りの良いゴルフです。世界の大舞台でもひるまず、自分のベストが出せるのは才能がある証拠。その結果、全米女子アマのタイトルを取れたと考えます。自分のやりたいことを明確に絞れれば、今後も才能がさらに花開き、楽しみな逸材です。

プロになった場合、まず何といっても誰にも必要なのは体力です。1年間、毎週各地を移動します。さらに、米国の場合は時差調整しながら試合を重ねます。プレーのパフォーマンス力と集中力を最後まで持続させるために必要な体力づくりが今後の課題です。

◆馬場咲希(ばば・さき)2005年(平17)4月25日生まれ、東京都出身。東京・代々木高2年。5歳でゴルフを始める。武器はドライバーで、平均飛距離は270ヤード。長身で同姓のプロレスラー、ジャイアント馬場さんは「全く知らないです」。あこがれの選手はネリー・コルダ、脇元華。家族は両親と姉、妹2人。愛称は「ばばさき」から「手羽先(てばさき)」。175センチ。血液型B。