日大ゴルフ部OBの阿久津未来也(28=フリー)がうれしい大会初優勝を飾った。首位と1打差の3位から6バーディー、1ボギーの67で回り、通算10アンダーで大混戦を逆転で制した。大学の先輩で、今大会の実行委員長を務める尾家清孝氏(64)から公私ともに面倒を見てもらった男が、プロ7年目の恩返しVで報いた。ベストシニアには田村尚之(58=ダイクレ)が、ベストアマには中野惠將(東海大九州3年)が輝いた。

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初優勝を飾った阿久津は、日大ゴルフ部の尾家大先輩と一緒に満面の笑みで表彰式の記念撮影に応じた。「尾家先輩にお世話になっていたので恩返しできた」。日大時代の16年に日本学生を制し、同年プロに転向した。日本プロ新人選手権優勝と華々しい滑り出しも、ツアー未勝利。本来の実力を発揮できていない男が、勝利の美酒に酔った。

プロ7年目の男に目をかけてくれたのが尾家氏だった。関東出身で現在は神戸を拠点に活動する阿久津は、23日から4日連続で尾家氏と夕食をともにし、前夜は焼き肉で励まされた。

優勝争いを意識した上がり3ホールから、緊張感も徐々に高まってきた。「最終日の優勝争いは経験がないのでアプローチとかでは手が震えました」。17番パー4では下りのフックラインを見事に読み切りバーディー。10アンダーで単独トップに立つと最後18番も下り2メートルのスライスラインでパーを拾って混戦を制した。「17番、18番はパットで手が動いてくれた。神様が見ていてくれた」としみじみ語った。

日大ゴルフ部の若手の桂川や岩崎らの活躍も刺激になっている。「300ヤード飛ばすスゴイ後輩がいるが負けられない。自分の生命線はパッティング。昨年はバーディー数も少なかったので高いレベルを保てるようにしたい」。次戦は国内男子ツアー開幕戦となる東建ホームメイトカップ(30日開幕)。北九州の地で栄冠を勝ち取り、勢いをつけた阿久津が日大ゴルフ部の先輩の意地を見せるつもりだ。

◆阿久津未来也(あくつ・みきや)1995年(平7)3月17日、栃木県生まれ。3歳でゴルフを始め、16年に日大で日本学生優勝。同年プロ転向し、日本プロ新人選手権優勝。最高位は18年日本プロ6位。ツアー自己ベスト64。180センチ、72キロ。得意クラブはパター。

○…初優勝を狙った坂本隆一は、最後まで食らいついたが1打及ばず2位タイに終わった。最終18番のパー3は、ピン上約2メートルにつけたがスライスラインを読み切れずパー。プレーオフに持ち込めなかった。「少し弱かったですね…。初めての最終日の最終組で朝からかなり緊張していた。でも、最後まで優勝争いができたのはいい経験になった」。敗れたが力を出し切りさばさばした表情だった。

○…初日首位タイで最終ラウンドに挑んだ上村竜太は2バーディー、ノーボギーの70で4位タイに終わった。ショットがこの日も好調で何度もバーディーチャンスにつけたが、2メートル前後のパットを決めきれなかった。「全体的に悪くなかったんですよ。ただ、いい所でパットが入らなかったのでリズムの乗り切れなかった」。優勝は逃したが、今後の大会に向けて手応えは十分に感じていた。

▽優勝争いを演じるも通算7アンダー6位タイの山田大 後半14番からの3連続ボギーが痛かった。でも来週のツアー開幕戦に向けて、いい緊張感の中で試合ができたことが収穫

▽通算6アンダー9位タイの時松 パットを決めるところで決められなかったので上位にいけなかった。(国内ツアー開幕戦に向けて)ショットは落ち着いてきている。あとはパターのかみ合わせ

○…九州プロゴルフ研修会(吉村金八会長)が主催・共催する九州サーキット開幕戦「第19回北九州オープン」は、トッププロも多数参加して2日間で2350人のファンを集めた。若手プロの育成も兼ねる同サーキットに今季から「NIKKENホールディングス杯」が新たに加わり、全6試合が有観客で行われる。吉村会長は「これだけ試合がある場はないし、試合や月例をこなして、本番にも慣れてくる。若手を育てる目的でもやっている。若手が育ってくれるのは楽しみ。ぜひ応援してほしい」と話した。

今後の試合日程は、以下の通り。

▽トヨタカップ(4月6、7日=ザ・クラシックゴルフ倶楽部)

▽NIKKENホールディングス杯(7月6、7日=太宰府ゴルフ倶楽部)

▽コーセーREカップ(8月9、10日=伊都ゴルフ倶楽部)

▽熊本オープン(10月11、12日=くまもと中央カントリークラブ)

▽鹿児島オープン(10月20、21日=島津ゴルフ倶楽部)

◆九州サーキット・北九州オープンゴルフトーナメント 「北九州」のまちの名前を冠として広く北九州をPRしていくため、市民と地域が協力して開催されている。福岡・北九州市にある4つのゴルフ場(若松ゴルフ倶楽部、九州ゴルフ倶楽部八幡コース、小倉カンツリー倶楽部、門司ゴルフ倶楽部)を会場に熱戦が繰り広げられる。九州サーキットとは、九州のプロやアマの若手育成とゴルフ界の活性化、地域の振興を目的に始められたトーナメントで今回で19回目を迎えた。次回は九州ゴルフ倶楽部八幡コースで開催予定。

◆門司ゴルフ倶楽部 1934年(昭9)11月、9ホールで開場。53年に18ホールに拡張。メンバーシップ制度も九州で最初に取り入れられた。現在のクラブハウスは60年に新築されたもので、開場当初はかやぶき屋根だった。優秀な建物に贈られる「BELCA賞ロングライフ部門」にも選ばれている。6700ヤードの丘陵コースで、設計は上田治氏。高麗グリーン。北九州オープンは09、14、18年年に続く4度目の開催。福岡県北九州市門司区大字吉志175、電話093・481・0711。