<男子ゴルフ:ツアー選手権宍戸>◇最終日◇23日◇茨城・宍戸ヒルズCC西C(7402ヤード、パー72)◇賞金総額1億5000万円(優勝3000万円)

 また1人、平成生まれのニューヒーローが誕生した。前日首位に立ったプロ転向4年目の小平智(23=フリー)が2アンダー70で回り、通算14アンダーで逃げ切り、メジャー大会でツアー初勝利を挙げた。来季から5年のシード権を獲得、7月の全英オープン切符も確実にした。

 小平の17番第1打は左ラフにいった。1組前をいくS・K・ホと14アンダーで首位に並んでいたが、小平は逃げる気はなかった。

 小平

 初日に同じところから池に入れてダボにしたけど、優勝するには思い切り打つしかないと思った。

 ピンまで165ヤード。フライヤーも考え、9番アイアンを選択した。勝負服の黒いウエアに包んだ体を、ムチのようにしならせてこん身の1打。ボールはグリーン手前の池を越え、見事にパーオンを果たした。この10メートルのバーディーパットを打つ前にホがボギーとなったことを知った。このホールを確実に2パットパー。1打リードの通算14アンダーを維持して、残る関門は18番あと1ホールとなった。

 小平

 ずっと手が震えていた。でもやってきたことを信じて、経験も少しは積んできたし…。

 最終日最終組は3度目。今年の日本プロでも松山と同組で2度目の経験。5位に終わったが、大崩れはしなかった。この日、得意のドライバーは18番もフェアウエーをとらえ、第2打もピン左5メートルにオンして、2パットパー。1イーグル、4バーディー、2ボギー、1ダブルボギーにまとめた。小平はついに勝った。

 父健一さん(72=ゴルフショップ経営)、母裕子さん(55)の元に駆け寄り、3人は抱き合った。「おやじが結構年なので、早く優勝を見せてやりたかった」。10歳から小平を教えた元レッスンプロの父は「努力はしていたけど、こんなに早く勝つとは…。感無量です」。母は「祈ってるだけでした」とただ涙した。

 日大を2年で中退して10年にプロ転向。11、12年とシード権が取れずに、昨オフのツアー出場予選会(QT)で24位になり、今季のツアー出場権を獲得しているが、同世代の石川、松山、藤本らには後れをとった。しかし、この優勝で「少しは追いつけたかな」。来年から5年のシード権を獲得。賞金ランキング2位に浮上して7月の全英オープン出場は確実に、8月の世界選手権シリーズ・ブリヂストン招待(米オハイオ州)の出場は内定した。

 小平

 勝つってすごいですね。世界が変わりますよね。

 大会名誉顧問の青木功(70)は「遼に松山、それに小平だろ。活性化していいぞ」。小平智、23歳。また1人、男子ゴルフ界にニューヒーローが誕生した日となった。【町野直人】

 ◆小平智(こだいら・さとし)1989年(平元)9月11日、東京都生まれ。10歳でゴルフを始め、駒場学園高から日大2年中退。08年日本アマ2位、09年朝日杯日本学生優勝などアマチュアで活躍し、10年にプロ転向。賞金ランクは11年78位、12年87位とシード権が取れず、今季は出場優先予選(QT)の順位24位でツアー出場。これまでの最高成績は今季の日本プロ5位。172センチ、70キロ<小平の記録メモ>

 ◆18人目

 1973年(昭48)ツアー施行後、ツアー初優勝が国内メジャーだった選手は、昨年のこの大会の藤本佳則以来18人目。

 ◆飛ばし屋

 ドライビンングディスタンス部門では、297・08ヤードで4位。フェアウエーキープ率と合わせたトータルドライビング部門も39ポイントで4位。また、この日の10番パー5でもイーグルを取ったように、パー5の2オン率は26・47%で1位となっている。