156センチの柔道家が「アンパンマン精神」で夢舞台に立つ。東京オリンピック(五輪)男子60キロ級代表補欠で、18、19年世界選手権銅メダルの永山竜樹(24=了徳寺大職)が26日、体重無差別で争う全日本選手権(東京・講道館)に初出場する。

日本代表クラス最小の156センチの小兵は、異例の挑戦に気持ちを高ぶらせている。小学生の頃からの憧れの舞台を控え、「ついに1つの夢がかなう時が来た。体格差があっても必ず勝つ方法はある。優勝を目指して、1戦1戦勝ち上がりたい」と強い決意を示した。

コロナ禍の影響で8カ月遅れの無観客開催となった今大会は、東京五輪代表・補欠らにも出場権が与えられた。永山は例年通り4月開催で仮に五輪代表に選出されたとしても「出ると決めていた」と明かし、誰にも相談せずに初参戦を決断。全日本挑戦を決めてから、連日100キロ以上の猛者たちと組み合う。ウエートトレーニングの量を減らし、重量級と組む時間を増やして地力をつけることを意識。重量級対策として、持ち味のスピードを生かした体の入れ方や、技を出すタイミングなどに重点を置いた。

「正直、重量級と組む方が好き。力の差はあるが、大きな相手にどう勝つかを考え、その戦術を練るのが楽しい。これが無差別の醍醐味(だいごみ)だし、魅力だと感じる。体格差は漫画みたいになってしまうけど、勝って1人でも多くの方を驚かせたい」

1回戦に勝利すると、東京五輪100キロ級代表補欠で身長差32センチ、減量前の体重差35キロの飯田健太郎(22=国士舘大)と対戦する。注目の好カードを心待ちにする永山は、自身の過去を思い返しながらこう言った。

「全日本選手権は自分の夢でもあるけど、それとは別に大きな選手に勝てず、悔しい思いをしてる子供たちのためにも、小さい自分が勝って勇気や希望を与えたい。その使命を果たす舞台だとも思っている」

幼少期から強さを追求し、「強くなること」だけを考えてここまで来た。アンパンマン精神を持つ24歳の小さな柔道家は、「柔よく剛を制す」を体現し、子供たちのヒーローを目指す。【峯岸佑樹】