トップリーグ(TL)で指揮する海外出身の名将が日本代表、ワールドカップ(W杯)について語るシリーズ第4回はクボタのフラン・ルディケ・ヘッドコーチ(HC=51)です。スーパーラグビー「ブルズ」を2度の優勝に導き、15年W杯はフィジー代表のFWコーチを務めました。経験も実績も豊富な名将は、15年W杯を経験したSO田村優(30=キヤノン)を軸とした、ハーフ団に注目しました。

日本代表について語ったクボタのフラン・ルディケHC
日本代表について語ったクボタのフラン・ルディケHC

取材現場の会議室に現れたルディケ氏は、十数枚の資料を手にしていた。約1週間かけて「ルディケジャパン」を構想したという。ベスト15は「簡単には教えられないよ」と秘密だったが、その一部を明かしてくれた。重要視したのはSHとSOのハーフ団だ。

ルディケ氏 9(SH)、10番(SO)でゲームをコントロールできる選手が勝利のために必要。9番は田中、流、10番は田村がキーとなる。一番大事なのは目の前をスキャンして、チェックしてどういう状況なのかを判断できるかどうか。戦術を決めていたとしても、スペースがあれば戦術関係なしにそこを攻められる選手が必要になる。

特にSOには、司令塔の役割と同時に、チームの象徴的存在になれるかにも注目している。

ルディケ氏 W杯でいつも勝つチームを振り返る時「10番は誰だ」と言えば、ニュージーランドならダン・カーター。イングランドだとジョニー・ウィルキンソンと、強豪国には常に代表入りしている名選手がいる。そういう意味で15年W杯を経験した田村はいいSOだと思う。カーターレベルでプレーできるだけのスキルがあり、状況判断して試合展開を全く別の形にするだけの力もある。ゴールキックもスマートだし、アタッキングキックの時でも、ただ距離を出すだけではなく、状況を見てキックができている。

ただハーフ団だけでは、勝つことはできない。状況に応じたプレーができる選手が、CTBにも必要だという。注目選手はラファエレ(神戸製鋼)、トゥポウ(コカ・コーラ)、中村(サントリー)だ。

ルディケ氏 ラファエレは左キックだし国際レベルでいいプレーをしているし、トゥポウはサイズがあってフィジカルが強い。サントリーの中村も同等のスキルを持っている。サイズが欲しいのか、スキルが欲しいのかはケース・バイ・ケース。時間帯によっても選択が変わってくると思う。

日本代表候補について名将は「競争を激しくするいい選手がたくさんそろっている」と頭を悩ませる。では、どうすれば日本史上初の決勝トーナメント進出を果たせるのか。

ルディケ氏 当然アイルランドとスコットランド戦がキーになる。日本は16年にスコットランドに、17年にはアイランドと試合をして負けている。ただ、どちらの試合も日本が圧倒していた時間帯があって、つかみかけていた勝利をうまくかわされただけだ。スコアボードを見ながら「自分たちは勝っている」という風に思える自信を持ち続けることができればチャンスは十分にあると思う。【佐々木隆史】

◆フラン・ルディケ 1968年4月24日、南アフリカ・リンポポ州ポロクワネ生まれ。現役時代はフッカー、NO8。08年から8年間、スーパーラグビー(SR)「ブルズ」を率いて09、10年優勝。SR歴代最多の149試合で指揮を執った。15年W杯でフィジー代表のFWコーチを経て、16年からクボタHCへ就任。