高校時代にラグビーを始めた俳優舘ひろし(69)は、ワールドカップ(W杯)日本大会PRキャプテンを務める。俳優業の根本には「紳士スポーツ」とされるラグビー精神があった。芸能界屈指のラグビー通が日本大会の意義を伝えた。

ラグビー愛を語る舘ひろし(撮影・中島郁夫)
ラグビー愛を語る舘ひろし(撮影・中島郁夫)

ダンディーの原点は、ラグビーだった。男の色気を漂わせ、格好良くスーツを着こなす69歳。舘は俳優業の基盤には、学生時代に夢中になったラグビーがあることを打ち明けた。「ラグビーは紳士スポーツ。本能的で荒っぽいイメージだけど、自己犠牲があり、相手や審判へ敬意も表す。僕の原点はラグビーにあると思っている」。

高校時代の舘ひろし(石原プロモーション提供)
高校時代の舘ひろし(石原プロモーション提供)

進学校の愛知・千種高で競技を始めた。俊足WTBで、SH以外のBKは全てこなした。主将を務めた2年時にはチームを県8強に導いた。3年になると大半が大学受験を控えて引退する中、「未練がある」として最後まで競技を続けた。根性論の「水を飲むな」「うさぎ跳びをやれ」などの猛練習で、ラグビー精神を学んだ。過酷な日々の中でもオシャレを忘れず、オールブラックス(ニュージーランド代表)好きだったため、1人だけ白ではなく黒ジャージーを着て練習に励んだ伝説も持つ。引退後は毎年正月のOB会に出席し、部員不足に悩むラグビー部のために、運動能力が高い学生の勧誘活動などにも積極的に協力する。

ワイルドな演技もラグビーで培った。人気ドラマ「あぶない刑事」での腕を振らない独特の走り方は「ラグビーボールを拳銃に持ち替えただけ」と秘話を明かし、アクションシーンで転ぶのも「土の上で擦り傷だらけだったせいか、抵抗がない」とさらりと言う。ラグビー観戦は習慣化され、代表戦の他、トップリーグやスーパーラグビー、欧州6カ国対抗などの海外試合まで録画視聴する。「世界のラグビーはエンターテインメント。反則やトライまでのつながりを細かく見返している。台本を覚える合間とかに見ているため、結構、忙しい(笑い)」。

15年W杯イングランド大会を観戦する舘ひろし(石原プロモーション提供)
15年W杯イングランド大会を観戦する舘ひろし(石原プロモーション提供)

日本がW杯で8強入りするためには、1次リーグのスコットランド戦(10月13日、横浜)が大勝負になると予測。特に“精密キッカー”ことSHレイドローを警戒し、「成功率を考えると、日本が勝利するためには2トライ以上の差が必要だと思う。寒い国との対戦が多いので、残暑を味方にして世界一のフィットネス(運動量)を見せてほしい」と期待した。PRキャプテンとして、アジア初開催となる日本大会の意義も伝えた。「開催12都市だけでなく、キャンプ地などの地方でも世界の超人類と触れあえる絶好の機会。文化交流も楽しみながら、日本中で開催される秋のお祭りを満喫してほしい」。ダンディーな元ラガーマンは、気持ちは熱く、頭は冷静に、2カ月後の大舞台を心待ちにした。【峯岸佑樹】

◆舘(たち)ひろし 本名・舘廣。1950年(昭25)3月31日、名古屋市生まれ。愛知・千種高でラグビーを始める。医学部受験を諦め、千葉工大在学中にオートバイチーム「クールス」を結成。その後、俳優デビューし、ドラマ「西部警察」「あぶない刑事」など代表作は多数。18年9月にW杯日本大会PRキャプテン就任。趣味はゴルフ、乗馬。181センチ。