日本としては望んでいなかった内容だった。試合の入りでゲームコントロールができず、日本のペースにならなかった。細かいプレーが雑になり、前半のペナルティーはロシア4に対して日本は倍の8。ポゼッション(ボール保持率)が前半39%だったのは、簡単にボールを失ったからだ。

ただ、この結果で来年のワールドカップ(W杯)開幕戦が不安になるということはない。ロシアは想定内だった。強いわけではない。悪かったのは日本で、その原因もはっきりしている。相手が元気な序盤に、ボール争奪戦でフィジカル勝負につきあってしまった。相手のパワーに押されたからミスをし、ボールを失った。前半の選手はパニックに陥っていた。

精神面も影響した。グロスターのスタジアムは建物が古く、暗い。天気も、芝の状態もよくなかった。前回のW杯で経験している選手はいいが、初めて経験する選手も多かった。「やりづらい」という思いが、プレーにも表れた。

相手の動きが鈍った後半は、日本が盛り返した。後半のペナルティーはロシアの3に対し日本は1。ポゼッションも54%まで上がった。SH、SOが代わって持ち味の速いテンポでラグビーができ、完全に日本のペースになった。

来年9月の開幕戦は、慣れた会場。この日のようにメンタルが不安定になることはない。暑さも味方になるはず。後半ロシアは動きが鈍ったが、9月の東京ならもっと苦しむだろう。今後10カ月で、飛躍的に体力がつくこともない。

W杯1次リーグのA組には、アイルランド、スコットランドの強豪がいる。1次リーグ突破のためには、初戦のロシア戦を確実に勝ちたい。勝敗で並ぶことも考えると、4トライ以上で与えられるボーナスポイントも獲得しておきたい。前半から競った試合をしていれば、相手の動きが止まる後半に大量点を奪える。ボーナスポイント獲得は決して難しいことではない。

ニュージーランド、イングランド、ロシアの11月3連戦で、日本の素早いテンポのラグビーが有効であることは分かった。逆に、それができないとロシア戦の前半のようになる。課題はキックの精度、そして相手のキック処理。前回15年大会前は毎日、何千本とハイボール処理の練習をした。もちろん、今もやっているとは思うが、強度を高めた中で繰り返すことが重要。そういう準備ができていれば、ロシア戦は勝てる。(沢木敬介・サントリー監督)