アイルランドに勝利し喜びを爆発させる日本の選手たち(2019年9月28日)
アイルランドに勝利し喜びを爆発させる日本の選手たち(2019年9月28日)

しっかり戦って、普通に勝った-。前サントリー監督の沢木敬介氏(44)は日本のアイルランド戦勝利を振り返って言った。奇跡や偶然ではなく、タックル、スクラム、ラインアウトなど数字でも相手を上回っていたと分析。ポゼッション(ボール支配率)を高めてボールを渡さず、アイルランドのやりたいラグビーをさせなかったことを勝因に挙げた。

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素晴らしい日本の勝利だったが、データから見れば普通に勝って当たり前の試合だった。アイルランドの得意な形を分析し、そうさせなかった日本のゲームプラン。それを集中力と抜群のフィットネスで完遂した選手たち。勝つべくして勝った試合といえる。

日本はアイルランドをよく分析していた。蹴り合いを挑んでは、相手の良さを引き出すだけ。短いパスでボールをつなぎ、徹底してキープした。開幕のロシア戦で30本あったキックは、17本と半減。無駄に相手にボールを渡さなかった。

試合を通じたポゼッションはほぼ互角だった、負けているアイルランドがボールを離さなかった後半20分以降を除けば、60%以上はボールを持てていた。早い展開でボールを動かし、相手を精神的にも肉体的にも追い込んでいった。アイルランドに勝つためのゲームプランと、それを完璧に遂行した選手の勝利だった。

時間帯別ポゼッション
時間帯別ポゼッション

大きかったのは、アイルランドが得意とするスクラムとラインアウトで粘れたこと。ファーストスクラムこそ反則をとられたが、他は組み勝つ場面もあった。ラインアウトでもマイボールを確実に獲得した。スクラムとラインアウトで相手ボールを奪ったことが、試合の流れを変えた。

数字で目立ったのは、タックル成功率。日本は94・8%でアイルランドの91・3%を上回った。ロシア戦は88・6%、大会直前の南アフリカ戦は81・5%だったから、際立った数字だ。自陣22メートルラインから内側では、100%だった。

日本のプレーを支えたのは、高レベルのフィットネスだった。前回、南アフリカに終盤で勝ちきったのはフィットネスの差が大きかった。選手たちは、かなりの自信を持っている。終盤に相手と差が出ることも知っている。だからこそ、リードされても焦らず、しっかりプレーができた。

タックル成功率
タックル成功率

アイルランドは自らボールを出して試合を終えた。指示によるものかは分からないが、ボーナスポイント1を得るためにはいい判断だった。日本は2連勝でベスト8進出に近づいた。ただ、まだ決まったわけではない。まずはサモア戦(10月5日)でボーナスポイントを含む勝ち点5をとること。その上でスコットランドとの最終戦(同13日)を迎えたい。