サモアに快勝した日本代表はサモア選手とともに客席へ向けあいさつする(撮影・清水貴仁)
サモアに快勝した日本代表はサモア選手とともに客席へ向けあいさつする(撮影・清水貴仁)

日本は最高の出来のサモアに苦しめられた-。前サントリー監督の沢木敬介氏(44)は、日本-サモア戦を振り返って正直な感想を口にした。

大きく差がつくと思われたペナルティーの数や圧倒できると予想されたスクラム、ラインアウトでデータはほぼ互角。それでも、獲得距離などトライに結びつくデータの差で勝利を呼び込めた。「今大会一番」(沢木氏)のサモアを破り、日本は決勝トーナメントに大きく前進した。

   ◇   ◇   ◇

正直言って、もう少し楽に勝てると思っていた。しかし、実際には厳しい試合だった。今大会、過去の2試合でサモアの半分以下だった日本のペナルティーが激増。結局10回ずつで差がつかなかった。日本はPGでボーナスポイント(4トライ)を狙えるだけのセーフティーリードを奪うべきだったが、相手にもPGを与えたために思うように点差が広がらなかった。

ペナルティーが増えたのは、サモアのFWがシンプルにプレーしてきたから。ダイレクトプレーで食い込まれたため、ペナルティーが多くなった。FWのセットピースも予想外だった。弱点があるとみていたサモアのラインアウトが安定していた。スクラムも圧倒するほどではなかった。弱点をしっかりと修正してきたサモアは見事だった。

日本-サモア 両チームの獲得距離
日本-サモア 両チームの獲得距離

フィットネスの点でも、サモアはよかった。暑さが弱まったこともあるが、運動量が極端に落ちることもなかった。これまで2試合は後半になれば相手の足が止まっていたが、サモアは日本と変わりなく動けていた。圧倒的なフィットネスの差で強豪に競り勝ってきた日本だが、サモア戦はその強みが出なかった。

もっとも、負ける感じはなかった。苦しんでも、最後は勝てるという展開だった。獲得距離はキャリー、キックともサモアを大きく上回った。日本の攻めが効いている証拠だ。相手の攻撃にも怖さはなかった。日本はサモアと比べてタックル成功率が高く、危ない場面は確実に止めていた。

相手のタックルをかわしてディフェンスラインを突破するクリーンブレークはサモアの6に対して9。パス本数も82本に対して124本と圧倒した。速いテンポでボールを動かしながら攻める日本の得意な形はできていたと言える。

日本-サモア 両チームのタックル成功率
日本-サモア 両チームのタックル成功率

結果的に、日本はボーナス勝ち点も手に入れる最高の勝ち方をした。後半40分を回っても、サモアは勝ち点をとる可能性を信じて攻めてきた。最後まであきらめない姿勢は立派だが、プレー選択はミス。仮に試合を終えずに攻めるつもりなら、日本の選手交代から劣勢になったスクラムではなく、タップキックで試合を再開するべきだった。そのミスがあったから、日本には有利に働いたのだ。

これで、日本がスコットランドに負けても1次リーグ突破が決まる可能性がでてきた。ただし、日本はあくまで勝利を目指すべき。13日までにコンディションを整え、準備することだ。今後条件が変化するかもしれない勝ち点を意識して戦略を立てるよりも、これまでと同じような戦略で勝利を目指す方が確実だ。

日本には「ホーム」という大きなアドバンテージがある。これまで1勝しかしていないスコットランドが相手でも十分勝てる。そのための準備をし、4戦全勝での1位突破を考えることだ。

前半、突破を図るWTB松島(2019年10月5日撮影)
前半、突破を図るWTB松島(2019年10月5日撮影)