<大相撲夏場所>◇14日目◇23日◇東京・両国国技館

 両横綱が敗れる波乱が起きた。横綱白鵬(24=宮城野)が、大関琴欧洲(26)に上手投げで敗れ、初場所11日目からの連勝は昭和以降8位の「33」でストップした。横綱朝青龍(28)も大関日馬富士(25)の外掛けに背中から土俵にたたきつけられて2敗目。白鵬は腰痛が再発、朝青龍も右腰を痛めて、ともに優勝へ暗雲が立ち込めた。

 口は半開きだった。白鵬は忘れていた黒星の「味」を、受け入れられなかった。首をひねる。照れ隠しの苦笑いが引きつる。右腕と背中には、屈辱の砂がベットリだ。黒星は、朝青龍に寄り倒された初場所優勝決定戦以来118日ぶり。「いまだ木鶏なれず、だな」。尊敬する元横綱双葉山が、69連勝が止まったときに知人に「イマダモッケイタリエズ」と打電した話を、持ち出した。

 完敗だった。琴欧洲は身長203センチ。自分より11センチも高い。懐も深く、ともに相四つ。左上手を先に取られると危険だった。突き放していく狙いは、立ち合いで崩れる。右へ動かれ、左上手を引かれた。自分の左手は、前まわしを引く琴欧洲の右手に阻まれる。豪快に投げつけられ「ついていけなかった」。全勝Vした先場所も、唯一苦戦した相手。取組前、付け人を「これだけ強くぶつかってきたのは久しぶりです」と驚かせた気合は、白星に結びつかなかった。

 不安はあった。日馬富士との全勝対決を制した前夜、持病が再発した。左腰の腸腰筋(ちょうようきん)が悲鳴を上げ、朝げいこ後は約1時間、15カ所にはりを刺した。体が柔らかいため、過度のマッサージはもみ返しで逆効果になる。はり治療は昨年九州場所以来で今年初。執行トレーナーは「(13日目の)すそ払いの際に痛めて、夜、寝るときに強い違和感を覚えたようです」と説明した。階段の上り下りも、苦痛に顔をゆがめた。激戦の代償は、大きかった。

 着替える際は浴衣で隠しながら、腰に湿布を張った。12日目に痛めた右手甲は、氷で冷やしたまま。傷だらけなのは体だけじゃない。「ま、悔しいですね…」。相撲史に残る連勝が途切れ、気持ちも切れるのか。千秋楽、若き横綱の真価が問われる。【近間康隆】