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スポーツ法政コラム
スポーツ法政コラム「オレンジ特急箱根行き」

「個性派チーム」率いる指導者たち

<監督・部長インタビュー>

 東京の郊外、多摩キャンパスの一角にある陸上部の練習グラウンド。強い冷え込みの中、選手たちはいよいよ間近に迫った箱根に向けて、日々練習に励んでいる。今回は、そんな選手たちの姿を熱いまなざしで見つめる2人の指導者、成田道彦監督と苅谷春郎部長(経済学部教授)にお話をうかがった。

 2年ぶりの予選会を3位で無事通過も、全日本大学駅伝では9位に終わり、シード権を失った今シーズン。まずは、これまでを振り返ってもらった。

監督「予選会は選手たちが集中してよく走ってくれたが、全日本では駅伝にならなかった。エース3人(黒田・長嶺・土井)がきっちり走ってくれただけだった」

 駅伝チームとして複数の選手たちを仕上げることの難しさは、監督にとって最も苦労する点である。

監督「駅伝はチーム競技なので、レース本番までにメンバーをきちんと揃えるのが大変だ。監督はレースまでの役割が大きい。レースが始まると、あとはもう選手に任せるしかない。それまでの過程において、選手ひとりひとりへフォローをきっちりしなくてはならない」

 近年、箱根駅伝において躍進を遂げ、「オレンジ旋風」として注目を集めるようになった法大。選手たちを最も間近で見続けてきた指導者たちも、年々成長を遂げるチームに手ごたえを感じているようだ。

部長「駅伝に適応できる選手が増えてきた。チーム内でつば競り合いが行われるようになり、底上げがなされた。今までの“ひとりエース”のチームから、駅伝チームらしくなってきた。私自身がスカウトした段階から、今の3・4年生が上級生となった時が勝負の年だと思っていた。そう考えると、前々回(第77回大会の総合4位)は思い描いていたシナリオが2年早く実現してしまったわけだが、駅伝チームとしての強さがさらに備わった今回も楽しみだ」

 法大躍進の大きな要因のひとつに、成田監督の就任が挙げられる。コーチとして法大に招かれて以来、わずか4年の間に箱根で上位争いのできるチームへと成長させた。

監督「それまでと変えたことと言えば、朝練習を多少しっかりさせた程度。ただ、指導者が毎日グラウンドに立っているのといないのでは、選手の練習での姿勢が違ってくる。緊張感を持って練習することできるからだ」

 監督本人のコメントは控えめだが、部長は“成田効果”についてこう考える。

部長「成田監督になってから、チームは様変わりした。最初は朝練習の変化についていけず、故障する選手も続出したが、慣れるにつれて力もつき故障は激減した。また、選手ひとりひとりに合わせた微妙なタイム設定は、やはり長距離のプロだからこそできることだ。選手たちも監督を信頼している」

 「部長」という役職は、一般にはあまり知られていない。部長の持つ役割ややりがい、さらには描いている理想像について、その熱い思いを語ってくれた。

部長「選手たちの成長プロセスを見ることが、私の楽しみだ。本来の部長の役割とは、部と大学とのパイプ役であり、他の部長たちはグラウンドに立つようなこともないだろうが、私のような存在が1人ぐらいいてもいいだろう。箱根に携われることは何よりの喜びだ。就任4年だが、(トップ快走やシード権争い、途中棄権など)これほど色々な出来事があるチームも珍しい。こんなスリリングな経験は、ただ教員をやっているだけでは味わえなかっただろう。選手たちが、強くなりたいとワクワクするような環境を作ること、それが指導者の仕事である。個性的な選手はその中で育ってくる。“個性"のひとつとして、髪をオレンジ色に染めたりすることも認めている。選手たちは、高校時代から一般の学生よりはるかに努力してきているのだから、髪を染めることぐらい認めてもいいのではないかという考えだ。その考えは監督も同じ。そうすることで、選手にとっては自分にプレッシャーを掛けるという意味合いもあるのだろう。厳しく管理漬けにすることなく、個性的なチームを作りたい」

 先日発表されたエントリーでは2年生3人、1年生5人と下級生も多く選出された。上級生の実力はすでに実証済みなだけに、下級生の成長が今年の一番の収穫と言えるのではないだろうか。

監督「1年生は夏合宿から良く走っている。全員とはいかないが、できるだけ多くの選手を使ってみたい。2年生も、だいぶ成長して使えるようになってきた。下が伸びてきたことでうかうかしていられなくなったのだろう。」

 特に1年生の実力には監督同様、部長も舌を巻く。

部長「高校の駅伝では長い区間でも10キロ程度で、それに対応する選手作りをしている。しかし箱根では、20キロ以上走らなくてはならない。なので、夏合宿での20キロ練習で初めて長距離適性を見極めるのだが、今年の1年生はその練習をしっかりこなすことができた。おそらく、今の3年生と同等か、それ以上の実力を持っているのではないだろうか。実際、(現3年の)黒田が1年の時は11キロでダウンしていたし(笑)」

 今大会から各校に1台ずつ運営管理車が設置され、指導者が1人乗ることになった。このことはレースにどのような変化をもたらすのか。

監督「正確なラップを即座に伝えることができ、それに応じた指示も可能になる。選手の好不調も間近に見て判断できるので、選手にとっても、指導者にとってもレースが楽になるだろう。」

 最後に、箱根での目標とそのライバル校、ポイントとなる選手についてうかがった。

監督「目標はシード権獲得。やはり予選会は負担なので。今は、ライバルについてまで考える余裕は無い。自分のチームのことで精一杯だ。ポイントとなるのは3年生だろう。箱根での経験もある選手たちなので、全員がしっかり走ってほしい。」

 ここにきて主力選手の故障という、われわれにとっては嫌な情報も伝わっているが、監督・部長と「信頼」という固い絆で結ばれた法大の選手たちは、どんな逆境も跳ねのける走りを箱根路で見せてくれるはずだ。

(大山 裕樹)

※次回、ついに連載最終回!!「区間エントリー発表/直前レース展望(仮)」をお届けします。12/31(火)更新予定です。

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協力大学スポーツ新聞






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