仙台育英が古川工に勝利し、2年ぶり25度目の夏の甲子園出場を決めた。最速144キロ右腕のエース佐藤世那(3年)が先発し、8回5安打10奪三振で完全復活。打っても公式戦初の満塁アーチをかけた。プロ注目の3番平沢大河内野手(3年)も2点三塁打を放ち、最後は9回からマウンドに上がった百目木(どめき)優貴投手(3年)が1イニングを無安打でぴしゃり。東北から聖地一番乗りを果たし、悲願の大旗取りへ弾みをつけた。

 投打の役者がそろった仙台育英が、宮城の夏を制した。最後の打者を右飛に打ち取ると、マウンドの百目木は両拳を握りしめ、駆け寄る郡司裕也捕手(3年)と抱き合った。ナインも一斉にベンチを飛び出した。歓喜の輪が広がった。百目木は「仲間と一緒にいい思いができてうれしい」と笑顔だ。佐藤世も「甲子園では借りを返したい」。春に続く聖地へ思いをはせた。 決勝の舞台で、ようやく最後のピースがはまった。エース佐藤世が復活した。8回119球を投げ被安打5の無失点と堂々のピッチング。準々決勝から3戦連続の先発だが、過去2戦はともに途中降板した。この夏「三度目の正直」で、結果を出した。バットでも自身公式戦初の満塁本塁打を放つ暴れっぷりだった。

 今大会不振を極めた打の主役、平沢も快音を響かせた。5回裏無死一、二塁の左打席から左中間へ会心の当たりの三塁打。2者をホームに迎え入れた。右足指骨折の影響もあり、前日準決勝まで打率1割5分4厘。平沢は「世那と自分が(チームの)足を引っ張っていたので、大事なところで打ちたかった」。自身最後の甲子園へ、好感触をつかんだ。

 佐々木順一朗監督(55)が「不安だらけでした」と振り返るように、甘い夏ではなかった。昨夏4回戦敗退からスタートした新チームは、秋の東北王者に続き神宮大会を制した。だがV候補に挙げられたセンバツは2回戦で、優勝した敦賀気比に敗れた。その後も佐藤世は肘の故障で思うような投球ができず、佐々木柊野主将(3年)の大会直前の右足甲骨折、平沢の不振もあった。「どこで負けるか分からない中で、全試合必死に食らい付いていくしかなかった」と佐々木柊は振り返る。

 それでも、逆境をバネに1歩ずつ成長した。今大会大車輪の活躍を見せた背番号10の百目木について、佐々木監督は「もうダブルエースでいいと思う」と言った。もうひとつの柱が出来たことで打線に余裕も生まれた。平沢は「世那だけじゃなく百目木もいる。打撃に集中して、楽に打てるようになった」。甲子園切符がかかる大一番で、チームとしての進化を証明した。

 高校野球100年の節目の年に、まずは東北から甲子園一番乗りを果たした。表彰式後の集合写真では、選手たちは「大旗白河越え」を成し遂げるのは俺たちだ! と言わんばかりに一斉に雄たけびを上げた。「自分たちはもっと強くなれる。今度こそ日本一を取りに行く」と平沢。仙台育英ナインが大旗を取りに、再び聖地に乗り込む。【成田光季】