選手17人で春夏初出場を果たした小豆島(香川)が、センバツ抽選会の「主役」となった。第88回選抜高校野球大会(20日から12日間、甲子園)の抽選会が11日、大阪市内で行われ、小豆島は釜石(岩手)との「21世紀枠対決」が決定。さらに、樋本尚也主将(3年)は選手宣誓の大役も引き当てた。大会第2日第1試合のため、応援団はフェリーをチャーターし、夜間に2000人規模が大移動する応援計画が急ピッチでスタートした。

 選手宣誓の大役を引き当てた樋本が、抽選会場中央ステージに顔を赤らめて上がった。

 「やってしまいました…」

 校内では誰もが「おとなしい」と口をそろえる主将は、おどおどしながらうつむいた。それもそのはず。その直前に、会場がドッと沸いた対決を引いていた。

 初戦の相手は、同じく21世紀枠の釜石だった。東日本大震災からちょうど5年のこの日、抽選会の冒頭で黙とうがささげられた。小豆島も離島のハンディを乗り越え部員17人で香川大会を制しての選出。話題性の高い「21世紀対決」が決まったばかりだったから無理もない。

 時間がたち、落ち着くと「決まったからには自分らしい言葉で全国の皆さんに感動を与えたい」と樋本はようやく笑顔になった。杉吉勇輝監督(32)も「宣誓が少し心配ですが…。小豆島の主将だからこその宣誓を、皆で考えたい」と、主将の背中を押した。

 樋本の引いた「第1試合」には、離島ならではのドラマも引き起こした。島をあげての2000人規模の応援ツアーが予定されているが、午前9時の試合開始に間に合わせるには、出発が深夜2時45分ごろが限界という。フェリー4隻をチャーターし、3つの港に分かれて、高松港からバス50台で甲子園を目指す。2校しか高校のない小豆島は、練習試合もフェリー移動が欠かせないが、約4時間かけて大応援団も異例の行程で聖地に乗り込んでくる。「(希望は)第2、3試合目をと言われていたんですが…」。樋本は申し訳なさそうに話した。

 もっとも、島民の応援熱は高まるばかり。アルプスチケットは用意する3500枚では到底足りないという。大阪在住の卒業生の協力で当日券を確保して島をあげての応援を実現させるプランもある。来春に合併する土庄も力を貸してくれる。近日中には13人しかいない小豆島吹奏楽部に土庄の25人が加わっての合同練習が始まる。さらに粋なプレゼントも。甲子園でおなじみの「コンバットマーチ」の作曲家で土庄町出身の三木佑二郎氏が「新コンバット」を提供。アレンジを加え、大舞台で披露される予定だ。

 「島の皆さんと一緒に戦います」(樋本主将)。人口約3万人。過疎化の進む島全体の後押しを受け、聖地で初出場初勝利のドラマを演じてみせる。【浜口学】

 ◆21世紀枠 01年導入。推薦校は原則、秋季都道府県大会のベスト16以上(加盟129校以上はベスト32以上)から選出。練習環境のハンディ克服、地域への貢献など野球の実力以外の要素も選考条件に加える。07年まで2校、08年から3校を選出(記念大会の13年は4校)。東、西日本から1校ずつ、残り1校は地域を限定せずに選ぶ。21世紀枠同士の対戦は過去1度あり、13年1回戦で遠軽(北海道)が3-0でいわき海星(福島)に勝った。同枠の過去最高成績は01年宜野座(沖縄)09年利府(宮城)の4強。

 ◆主な少人数チーム 小豆島は部員17人でベンチ登録人数(18人)に満たない。過去のセンバツで主な少人数チームは「さわやかイレブン」こと74年池田(徳島)が11人で準優勝。エース山沖之彦を擁した77年中村(高知)は12人で「二十四の瞳」と呼ばれ準優勝。87年大成(和歌山)はわずか10人で臨み、初戦敗退もV候補の東海大甲府に1点差(3-4)と善戦した。