早実(西東京)の清宮幸太郎内野手(2年)が、松商学園(長野)との2試合で3本塁打を放ち、高校通算47発とした。背番号は春季東京大会の「8」から「3」に戻り「3番一塁」で出場。第1試合の初回1死二塁から右中間場外へ運ぶ先制2ランを放つと、3回にも右中間へ2打席連続アーチをかけた。第2試合の5回には、右翼場外へ推定飛距離140メートルの特大2ラン。元ヤンキース松井秀喜氏(41)が記録した高校通算60発到達は時間の問題だ。

 清宮の一撃が、運営側を動かした。初回の第1打席、低めの直球をとらえた打球が右中間場外へ消えた。驚異の飛距離に、場内アナウンスが響いた。「ライト後方に駐車しているお客様は、車を移動してください」。今月14日の御殿場西(静岡)との練習試合以来の1発で勢いに乗った。続く3回は弾丸ライナーで、右中間席へ2打席連続アーチをかけた。「気持ち良かったです。軽く打っただけで飛んだし、着実に力がついているなと思います」。主催者に警戒された怪物スラッガーは、第2試合でも右翼席場外へ飛ばした。

 地元の“サプライズ演出”にも応えた。球場の両翼と中堅までの距離がフェンスに表示されるのは一般的だが、右中間にも「113」と書かれていた。主催者は「清宮君がホームランを打つ位置を想定して、昨日(28日)書きました」。謎の数字の意味を聞いた清宮は「右中間だけで何かおかしいな、と思ったんですよ。打てて良かったです」と笑った。

 大先輩のゆかりの地で、復活の手応えをつかんだ。80年5月25日に開場記念として行われた同カードで、当時早実1年の荒木大輔氏(52)が背番号「5」で完投勝ち。同年夏の甲子園でも投手として活躍し「大ちゃんフィーバー」のきっかけとなった場所だった。今月上旬の秋田、宮崎遠征は「ケガ(右肩痛)明けだったので」と不発も、2試合7打数で5安打5打点。改修工事を記念して招かれた荒木氏の前で特大アーチをかけた。「自分にとっても甲子園に向けて1つのきっかけになったかな」。主砲の上昇とともに打線も爆発。和泉実監督(54)は「清宮は送球を捕ってくれる。一塁に固定できそうな雰囲気になってきた」と話した。

 3月の練習試合解禁から約2カ月で25発を量産し、高校通算47本塁打。3年春のセンバツ開幕時に通算42本だった松井氏を大きく上回るペースだ。今夏での60本到達も見えてきたが「そういう欲はあまりないけど、チームバッティングの延長でホームランが出たらいいと思う」。清宮が、高校野球の歴史に名を刻んでいく。【鹿野雄太】