「高校BIG3」の一角、花咲徳栄(埼玉)高橋昂也投手(3年)が、11安打されながら3失点完投。1回戦の大曲工(秋田)から得点圏での被打率はゼロ。2試合連続の完投で樟南(鹿児島)を6-3で破った。

 不死鳥エースが真骨頂を見せた。花咲徳栄・高橋昂は毎回走者を背負い、11安打を浴びても負けなかった。味方が逆転した直後の6回2死一塁では「点はやらないぞ、という気持ちで投げた」。この日最速の146キロ直球で空振り三振を奪い、マウンドでほえた。10安打1失点で完投した大曲工(秋田)との初戦と同様に、残塁の山を築いた。

 得点圏に走者を置いた場面で無類の強さを見せた。初回、先頭から直球を狙われて連打された。「外を狙った球が中に入った。変化球中心でいきました」。4回にスライダーを打たれて先制され、タイミングが合ってきたと見れば直球主体に変更。「打たれて当たり前なので、まずいと思った場面はない」。女房役の野本は「セットポジションで球速が落ちない。走者がいたほうが、強気のいいボールが来る」と言った。

 実直に、上だけを目指してきた。岩井隆監督(46)は「中学で勝った経験がない子。入学当初は野球がうまくなかった」と振り返る。失点を防ぐため、バント処理やクイックの技術を磨いた。今春センバツ後は家から学校までの約10キロを毎日走って往復した。監督に「来るときだけでいい」と言われても、練習後で疲れていても続けた。父敏樹さんは「小さい頃から、味方がエラーして負けても他人のせいにしない。悪口を言わない子だった」。責任感の強さで努力を続け、高校屈指の左腕に上り詰めた。

 謙虚で口数も少ない。BIG3と呼ばれることに「注目されるほど実力はない」と言った。3回戦の相手は、今大会完封一番乗りでドラフト1位候補に躍り出た151キロ右腕・今井達也投手(3年)を擁する作新学院。「すごい投手。格上の相手なので、捨て身で向かっていくだけです」。BIG3に割って入った今井との「四天王対決」も、耐えて勝つ。【鹿野雄太】

 ▼花咲徳栄・高橋昂は今大会2試合で被安打21、4失点と平凡な成績に見えるが、走者得点圏被打率はゼロをキープ。失点の内訳は大曲工戦がソロ本塁打。樟南戦は走者一塁からの長打が2度と、内野ゴロによる1点。走者を得点圏に背負った場面では大曲工戦が11打数無安打、樟南戦が8打数無安打で、今大会通算19打数無安打だ。埼玉大会でも決勝の聖望学園戦の9回2死三塁など6試合で計4打数無安打。この夏は地方大会から要所で粘り続ける。16強のうち1回戦から2勝して勝ち上がった9校の中では、花咲徳栄だけ走者得点圏で被安打がない。【織田健途】