みちのくのドクターKが「脱チャップマン」で甲子園に挑む。21日開幕のセンバツに出場する花巻東のプロ注目左腕、菊池雄星投手(3年)が16日、神戸市内で行われた育英との練習試合に先発。5回8安打4失点の内容も、毎回の6Kと三振を奪う投球は変わらない。この日は、WBC日本戦に先発したキューバの164キロ左腕チャップマンの投球も目に焼き付け、エースとしての投球スタイルで甲子園に挑むことを誓った。

 初回、いきなり2ランを浴びるなど、菊池は猛攻にさらされた。それでも、表情に焦りの色はない。「ちょっと疲れもあって、抜けたカーブを打たれてしまった。3回からは修正できたので大丈夫です」。直球の最速も146キロをマーク。視察に訪れた楽天、ソフトバンク、日本ハムのスカウト陣をうならせた。

 この日、菊池は早朝5時に起きてWBC日本代表のキューバ戦をテレビ観戦。同じ左腕で、剛速球を持つキューバの先発チャップマンが、3四球などで3回途中KOされた内容を「いくら球が速くても、制球が悪ければ意味がない。あらためて勉強になりました」と“反面教師”として受け止めた。

 昨秋公式戦は65回1/3で69K。菊池の奪三振率9・51は、センバツ出場校のエースで3位の成績だ。それでも「内野ゴロを打たせて味方の守備のリズムをつくることも大事。三振は取りたいところで取れるのが一番いい」というのが菊池の投球哲学。2回2死一、三塁という、狙って取りたい場面で見逃し三振に仕留めるなど、信条に合った投球を見せる。ブルペンでは常に打者を立たせるなど、内角やコーナーへの制球力向上に取り組んできた成果もあり、今月の対外試合解禁後は6試合で11・45の奪三振率をマークしている。

 周囲からは150キロを期待されるが、菊池が目指すのは、全国の強豪校に勝てる投球術。「相手の苦手なコースに投げれば、打たれることはない」。聖地で快投を披露する。【由本裕貴】