<高校野球神奈川大会>◇19日◇3回戦

 慶応は1年生右腕、斎藤大輝投手が2安打9奪三振で公式戦初先発を完封で飾り、3-0で上溝を破った。

 「斎藤」&「大ちゃん」。ライバル早実の歴史を彩るネーミングを併せ持つ、さわやかボーイが陸の王者慶応に現れた。右横手投げの斎藤が、公式戦初登板を初完封で飾った。2安打9奪三振で二塁も踏ませず、106球で締めた。「ちょっと緊張したけど楽しむことができた。それが良かった」とはにかんだ。

 早実・荒木大輔(現ヤクルト投手コーチ)の大ちゃんフィーバーなんて知らない94年生まれ。佑ちゃんが日本一になった06年は小学6年生だった。栃木・小山市から「野球だけじゃなくて勉強もしたかった」と慶応に進学。早実受験に揺れることはなく、慶応が8強入りした08年甲子園をテレビで見て決心した。

 最速130キロ台の直球を、糸を引くように外角低めにコントロールした。同じコースからスライダーを曲げて、2回は3者連続三振。91年就任した上田誠監督(52)にとって初という夏の1年生完封。同校OBの西武佐藤も1年時は救援登板だけだった。早大・斎藤も1年夏は登板なし。「戦前は分からないけどね。知っている限り初めて。顔もいい。慶応に斎藤、大ちゃん。面白いよね」と笑った。

 父一人さんはバスケットボールの元日本代表選手。戦うDNAを受け継ぎ、器械体操、水泳をこなして身長は180センチまで伸びた。気温30度の炎天下でも、ハンカチは必要ないぐらいクールに、テンポ良く投げ込んだ。群馬出身の早大・斎藤と同じく、栃木から大志を抱いて神奈川にやってきた。両親と離れての寮生活。苦労は多くても、こんな勝利があれば忘れられる。夏の慶応に、ニューヒーロー誕生の予感が漂った。【前田祐輔】