<全国高校野球選手権:組み合わせ抽選会>◇3日◇大阪国際会議場

 第93回全国高校野球選手権(6日開幕、甲子園)の組み合わせ抽選会が行われ、3回戦までの対戦が決まった。東日本大震災の被害が大きかった岩手代表の花巻東は2日目の第3試合で帝京(東東京)と対戦する。3月19日に予定していた練習試合が震災の影響で中止をされたが、大舞台で対戦が実現。左太もも裏痛を抱える最速151キロ右腕、大谷翔平(2年)はスクランブル登板へ意欲を示した。

 みちのくの怪腕の甲子園デビューは、春夏3度の甲子園優勝を誇る帝京戦になった。相手が決まった瞬間、どよめく花巻東の席でひときわ目立った191センチの大谷は「伊藤拓郎さんもいますし、打線も強力ですし」と苦笑いした。だが「初戦で強豪に勝てれば、それだけ勢いに乗れますから」と引くつもりは毛頭ない。

 両校は今春、関東で練習試合を組んでいた。佐々木洋監督(36)は手帳をめくり「3月19日でしたね」。震災1週間後で「まだまだパニックだった」時だ。すぐ敵将の前田三夫監督(62)に断りの電話を入れ「大丈夫か?

 何かあれば言ってほしい」と気遣われた。前田監督も「家族が行方不明になったり、自宅が全壊した部員がいる、と聞いた」。当然、キャンセルになったが、望んでいた再戦が甲子園の大舞台になった。

 帝京が合宿を張っていた花巻球場に、花巻東が隣接している縁で交流がスタート。菊池雄星(西武)らが2年時の08年にも対戦した。当時は「雄星が18失点の火だるまで大敗した」(佐々木監督)が、今度は“雄星以上”と言われる好素材の大谷でリベンジを果たす。

 大谷は、岩手大会2週間前に左太もも裏の付け根を肉離れした。痛み止めの注射、座薬、服用薬を用いて4回戦の久慈東戦には登板したが、1回2/3を投げて再発。以来、マウンドに上がっていないが、リハビリは順調だ。この日の練習で、8割の力で40球を投げ込むまでに回復している。

 佐々木監督は「将来があるので悩みますが、やはり大谷の力は必要になる」。大谷も「被災した岩手を日本一に導くため、初戦は大事。相手が強いほどワクワクしますし、投げたい」と意欲を見せた。【木下淳】