<高校野球秋季東北大会:光星学院9-8花巻東>◇準決勝◇11日◇秋田・こまちスタジアム

 光星学院(青森)が、来春センバツ出場の当確ランプをともした。田村龍弘主将(2年)の2本塁打などで最大5点差をひっくり返し、花巻東(岩手)に逆転勝ち。準優勝した夏の選手権後に発覚した飲酒問題を乗り越え、3季連続の甲子園に大きく前進した。

 最後の打者を右邪飛に仕留めると、田村はマスクを脱いで笑顔をのぞかせた。8失点粘投の城間竜兵投手(2年)をねぎらい、試合後は花巻東の大谷翔平左翼手(2年)と握手。「頑張れよ」と声を掛けられ、勝利を実感した。初回に満塁弾を浴びるなど5失点。新チームになって初めての追う展開も、終わってみれば17安打の逆転劇。仲井宗基監督(41)は「小細工で点を取ろうなんて思ってなかった」と光星野球を貫いた。

 センバツ出場に近づく2年連続5度目の決勝進出。導いたのは、今年も田村だった。昨秋の東北大会準決勝(対仙台育英)で1試合3発。今年は2発だ。1本目は1回2死から内角カーブをうまくとらえた。2点を追う6回1死二塁からの2ランは、狙った。普段はミートを心掛ける男が「走者もいたし、この秋は絶好調なんで」。内角高めの直球を強烈に引っ張り、大谷の頭上にアーチをかけた。

 夏の甲子園で準優勝に輝いたが、歓喜の翌日に3年生部員3人の飲酒問題が発覚した。甲子園最終日まで戦い、さらに1週間の練習自粛。新チームの始動は日本一遅くなったが、3年生が借りを返した。例年は自動車教習所に通う時期だが、今年は禁止。19人全員が甲子園後も練習参加し「迷惑を掛けた分、後輩を懸命にサポートする。急激にチーム力が向上した」と仲井監督は感じていた。

 田村はこの日朝、相手の左腕対策として左利きの沢辰寿(3年)に打撃投手を務めてもらった。1本目のカーブが「沢さんの変化球とそっくりだった」と30球の予行演習を生かせば、9回表に決勝打を放った天久翔斗右翼手も「サポートのおかげです」と感謝した。

 問題発覚後、仲井監督の耳には「辞めて責任を取れ」と外部の声も入ったが「それは逃げ。辞めるのは簡単だけど、大事なのは立て直すこと」。覚悟を決めて出直し、3季連続の甲子園を当確とした。【木下淳】