<高校野球東北大会:東陵13-11角館>◇15日◇準々決勝◇岩手県営野球場

 東陵(宮城2位)が角館(秋田1位)に競り勝ち、初の4強入りを決めた。延長10回、2番工藤翔内野手(2年)が2点適時打。9回にも見事なカットプレーで勝利に貢献した。

 延長10回2死一、三塁。東陵の2番遊撃・工藤は、燃えていた。2回には適時失策。取り返すには、ここしかない-。初球。こん身の一振りで直球を打ち返すと、打球は左中間を割り、2者が生還した。両チーム合わせて33安打が飛び交った乱打戦を制し「良かった。ホッとしました」と喜んだ。

 「コールドも頭をよぎったけど、野球は怖いなと思った」と千葉亮輔監督(42)。同点の8回、1番山崎誠悟外野手(2年)の2点適時打など打者12人の猛攻で7点を奪った。しかし、悪夢が待っていた。11-6の9回。四死球を挟んで6連打を浴び、ついに追いつかれた。なおも無死満塁。「ああなったら、もうやられる」(千葉監督)絶体絶命の状況を迎えた。

 もう後がないピンチを救ったのも工藤だった。中堅山崎への飛球。「誠悟が下がって捕って体勢が良くなかった。ファーストがカットに入ったけど、間に合わない」と、瞬時の判断で二塁ベースとマウンドの間に入った。8-6-2。ストライク返球で、三塁走者を刺した。

 「ずっとたたき込まれてきたプレー」。仙台育英OBの父裕正さん、東陵OBの兄将理さんと幼少期にキャッチボールを繰り返した。3人が一直線に並び、振り向きざまに投げる反復練習が大一番で生きた。

 青森山田との準決勝に勝てば、同校初のセンバツにグッと近づく。父も兄も行けなかった甲子園へ-。攻守の中心として、チームを引っ張る。【今井恵太】