<秋季高校野球東海大会:静岡商12-4いなべ総合学園>◇19日◇1回戦◇愛知・岡崎市民球場

 大逆転劇での歴史的な白星だ。静岡商(静岡2位)が7回コールドでいなべ総合学園(三重3位)を破り、秋季東海大会で、35年ぶりの勝利を挙げた。0-4で迎えた2回、打者10人で6安打7得点の猛攻を見せ試合をひっくり返した。同校の同大会2ケタ得点は39年ぶり3度目で、過去2回はともに優勝している。39年ぶりのセンバツ出場へ弾みをつけて、今日20日の東邦(愛知1位)戦に臨む。

 球場の空気が一変した。静岡商が4点ビハインドとなった2回だ。先頭の5番河合優(すぐる)内野手(2年)の中前打から相手の2失策にも乗じ一気に追いつく。なおも1死一、二塁で、打席には3番望月翔太郎内野手(1年)。2球目の直球を中堅手の右後方まで飛ばす2点適時三塁打で勝ち越した。

 さらに、4番国松歩(あと)外野手(2年)の左前打でこの回7得点。10-4の7回には、6番加藤文也外野手(2年)の適時打などで2点を加え、試合を終わらせた。秋の東海大会の初戦敗退を4で止め、78年以来となる勝利。望月は「これまで1点差負けが続いていたので、コールド勝ちはうれしい」と、屈辱を一掃する大勝に胸を張った。

 成長著しいナインは、この日もその一端を見せた。相手の先発は最速146キロでプロ注目の石垣幸大投手(2年)。試合前の指示は、スライダーを捨てての直球狙いだった。ところが、その変化球をことごとくはね返し得点を積み重ねた。直球がほぼ130キロ台後半と、石垣が力んでいたこともある。右腕の自責点は0と相手の拙守も目立った。それでも、そのスキを見逃さなかったのは実力。三振ゼロが選球眼の証しだ。大代茂雄監督(44)も「あんなに点を取ったことない」と、中部地区大会から初となる2ケタ得点に驚くしかなかった。

 屈辱の2敗がエネルギー源だ。8月3日の新チーム初戦。東海大相模(神奈川)との練習試合で1-12、0-16と惨敗を喫した。そのスコアシートは、グラウンドのベンチに貼られている。強くなりたい一心で練習したナインは、センバツまであと2勝のところまで来た。それでも、望月は「相模には16点取られたのでまだまだ」と、この日の13安打12得点にも満足しない。成長を促しているのはあくなき向上心だ。今日20日のシード校東邦戦で、静岡商はまた強くなる。【石原正二郎】