野球のU18ワールドカップで、米国代表が犠牲バントをしているのを何度か目にした。米国でももちろん犠打は昔から使われている戦法だが、メジャーでは犠打の是非についてたびたび議論が起き、将来的には「過去の遺物」になるのでは、という声もある。

 メジャーの犠打の数を調べてみると、昨季レギュラーシーズンに記録された犠打は計1343。これは1試合につき0・28ペースで、野球記録サイトのベースボール・リファレンスによると犠打が記録され始めた1894年以降、最も少ない頻度だという。今季はここまで1試合平均0・25ペースで犠打が記録されており、最少だった昨季よりさらに減少している。セイバーメトリクスでは犠打は「走者を一つ進塁させるために1アウトを犠牲にすることは無駄」とデータで示されており、セイバーのデータに比重を置く球団が増えてきたのがその要因だろう。

 セイバー活用の先駆者とされるアスレチックスのビリー・ビーンGMはあからさまに犠打を嫌っていることで知られており、その信条通りアスレチックスの犠打数は昨季、両リーグで最少の19。今季はそれをさらに下回るペースだ。ナ・リーグの場合は投手が打席に入るため犠打は多くなるが、セイバー信奉者のジョー・マドン監督が指揮を執る今季のカブスも犠打は少なく、7月27日のロッキーズ戦で先発右腕ヘンドリクスが犠打を決めたときには「カブス投手が犠打を記録したのは今季4度目」とニュースにまでなった。

 それでもメジャーには、犠打好きとして有名なロイヤルズのネッド・ヨスト監督のような指揮官もまだいる。日ごろから犠打の有効性を主張し、実際に昨年のワイルドカード・プレーオフでは1試合に犠打を4度も駆使し、アスレチックスを1点差で倒している。ちなみにメジャーでは犠打が減る一方で、守備シフトの逆を突くなどのセーフティーバントは増加傾向にあるようだ。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)