ヤンキースのジョー・ジラルディ監督が今季、新たな試みを行っている。試合前の慣例となっている会見で、ホームにいる日は必ず日替わりTシャツを着用して登場するのだ。Tシャツは米国内や国際的な慈善事業団体、組織のロゴやキャッチフレーズが入ったもので、毎日違うチャリティーのTシャツを着て、会見の冒頭でその活動について説明するのが日課になっている。

 これを1シーズン続けるので、少なくともホームゲーム数と同じ81の慈善団体が紹介できることになる。会見にはほぼ必ず球団専属ケーブルテレビ局YESのカメラが入り、会見の模様が毎日プレゲームショーで流される他、YESの公式サイトで会見の動画が見られるようになっているため、多くのヤンキースファンの目に触れ、宣伝効果は絶大だろう。

 ジラルディ監督は、日ごろから慈善活動を熱心に行っており、今年のキャンプ中にはフロリダ州タンパのキャンプ地近郊の病院を訪問し、重い病気と闘う子どもたちを激励するなどしていた。同監督のそんな活動を見て、球団のジェーソン・ジロー広報部長が会見でチャリティーTシャツを着てはどうかと提案し、今季開幕から始まった。

 ジラルディ監督は、そうした団体の活動内容の紹介を非常に流ちょうに、ときには笑いが取れるエピソードを交えながら話す。紹介するすべての団体を熟知しているわけではないだろうから、恐らく予習をし、話す内容を考えてから会見に臨んでいるのだろう。最近はテクノロジーやデータ分析の進歩でメジャーの監督の仕事が多様化しているが、ヤンキースは球団の顔の1人としての活動も数多くこなさなければならないので負担が大きい。しかしヤンキースで9年目、マーリンズも含めると10年目になる同監督は、年々話すことが上達しているように思う。開幕戦でOBの松井秀喜氏が始球式を務めたが、試合前に同監督が松井氏について尋ねられ、あらゆる称賛の言葉をよどみなく流れるよう語っていた。数年前より確実に語る言葉の引き出しが増えていて、環境が人をつくるとはまさにこのことだと感心した。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)