イチローが所属するマーリンズの身売り話に、新展開があった。元ヤンキースのデレク・ジーター氏を含むグループが買収に興味を示しているという。元フロリダ州知事で昨年の米大統領選で共和党候補の1人だったジェブ・ブッシュ氏のグループ、もう1つゴールドマン・サックス社の後ろ盾を得たグループも参戦し、少なくとも3グループが獲得に動いているとされている。

 FOXビジネス・ネットワークが最初にこれを伝えると、ニュースはすぐに他のメディアでも報じられ、ツイッターなどのSNSを賑わした。ジーター氏は球団オーナーになりたいという願望を常々口にしてきたためサプライズのニュースではないが、それでもこれだけ話題になるのは「デレク・ジーター」というブランドの威力があってのことだ。

 地元マイアミでは、球団の身売りはもう確定的ととらえられており、いつ新オーナーに交代するかに注目が集まっている。キャンプ中にマーリンズのあるフロントの方と話す機会があったが、その方は「球団売却は煩雑な手続きなので、実際に新オーナーに移行するまで2~3年かかるのではないか」と予想していた。実際、最近の例を見ると、パドレスは前オーナーが2009年に1つの投資家グループと球団売却の話し合いを始めたが、それが2012年に破談となり、同年8月に別のグループに売却するという紆余(うよ)曲折があった。これが示すように、身売り話はスムーズに進むとは限らない。

 だが地元では速やかなオーナー交代を望む声が多く、年内に売却が成立する可能性もあるのではとの期待もある。米メディアではジーター・オーナー待望論もあり、ESPNの名物記者バスター・オルニー氏は、自身のインターネット放送の中で「ジーターはMLBにとってパーフェクトな存在。MLB側が望ましい人物を選んでグループを再編することも可能」と指摘している。また今回の球団身売りは、ドジャースのケースと重ね合わせて語られることも多い。ドジャースの前オーナーであるフランク・マッコート氏は評判が悪く、ファンの観戦ボイコットまで起きたほどだったが、地元ロサンゼルスのスポーツ界の名士マジック・ジョンソン氏を含む新オーナーグループに交代し、イメージを回復した。マーリンズの現オーナーであるジェフリー・ロリア氏もファンからの評判が悪く、新オーナーはイメージ回復がひとつの課題になってくるというのである。

 こうした米国内の空気を見ると、ジーター氏が興味を示しているというのが事実ならば、同氏が新オーナーグループに名を連ねるのはもはや必然といってもいいのかもしれない。

【水次祥子】(ニッカンスポーツ・コム/MLBコラム「書かなかった取材ノート」)