<オープン戦:パドレス9-13ロイヤルズ>◇2月29日(日本時間3月1日)◇アリゾナ州ピオリア

 【ピオリア(米アリゾナ州)2月29日(日本時間3月1日)=四竈衛】招待選手から3季ぶりのメジャー復帰を目指すロイヤルズ野茂英雄投手(39)が、第1関門をクリアした。パドレス相手に、2番手としてオープン戦初登板。味方の失策もあり、2回3安打1失点(自責0)と「0」にこそ抑えられなかったものの、パ軍井口資仁内野手(33)を中飛に打ち取ったほか、宝刀フォークで2三振を奪うなど、生き残りへ前進した。

 いつもと変わらない、淡々とした口調でも、野茂の言葉の断片には、確かな手応えがにじみ出た。オープン戦では06年3月以来となる「メジャー」マウンド。制球重視のため、代名詞のトルネードも封印した。2回3安打1失点(自責0)の成績だけを見れば、手放しで喜ぶべき数字でもない。ただ、打者と対する空気をじっくりと味わうかのように、セットポジションだけで31球を投げ込んだ。「順調だと思います。どこに痛みもなく、楽しくやれました」と話す姿は、重圧や悲壮感などとは無縁だった。

 高めに抜けるなど、ばらつきもあった。それでもフォークは、やはり際立っていた。奪った2三振は、いずれもストライクからボールゾーンに落としたもの。それだけ速球に威力がある証明でもあった。この日の最速は時速140キロと、全盛期には及ばない。それでも、カウント2-1からフォークで中飛に打ち取られたパ軍井口は、野茂の変化を感じとっていた。

 井口「2年前は速球に勢いがなかったですが、今日は高めにもビシッと来てましたし、良くなってると思いました。フォークも低めはよく落ちてました。あの速球があれば、なかなかあのフォークをしっかりと打つのは難しいですね」。

 06年の春季キャンプでは、同じホワイトソックスのメンバーとして練習しただけに、だれよりも井口の言葉は説得力十分だった。野茂自身も、空振りを調子のバロメーターとする考えに「それは言えると思います」と同意するなど、目先の数字に左右されるつもりはない。

 ただ、メジャーに残るための条件は簡単ではない。先発5人枠は、既にメッシュ、グリンキー、バニスターまでが確定。残り2枠をトムコ、マロース、ベイル(元広島)ら5人で争うことになる。今後も、好内容の投球を続けることが絶対条件。「こういうチャンスをくれた球団に感謝したいですし、何とかメジャーに残りたいです」。常に淡々としていても、その決意には、熱がこもっていた。