現役引退を表明した前ロイヤルズの野茂英雄投手(39)に対し、日本人初の米野球殿堂入りを推す声が上がった。ドジャース時代に監督を務めたトミー・ラソーダ氏(80)が17日(日本時間18日)、米ロサンゼルスで「野茂の将来の殿堂入りを願っている」と提言した。日米通算201勝、両リーグでのノーヒットノーランなど実績は十分。資格を得る2014年にも、野球の歴史を変えた「パイオニア」の殿堂入りが実現する。また国内では国民栄誉賞の声も出てきた。

 ラソーダ氏が、米球界を代表して声を上げた。「ノモは米国の野球殿堂入りの有力候補になれるはずだ」。ドジャース入団時から監督として見守ってきた恩師はこの日、ドジャースタジアムで緊急会見した。「マイ・サン(私の息子)」と呼ぶ野茂氏の引退表明を聞き、いてもたってもいられなかった。

 メジャー123勝という成績以上に「トルネード」の功績は大きかった。ラソーダ氏は「最初は異文化に戸惑ったが、彼は目標を成し遂げた」と高く評価。「彼がいなかったら米国の球団は日本選手の獲得をためらったはず」と、その後の日米野球界への好影響をたたえた。

 選手なら誰もがあこがれる米野球殿堂。昨年は2632試合連続出場のカル・リプケン氏が選出された。その一方で通算204勝のハーシュハイザー(元ドジャース)や2105安打のオニール(元ヤンキース)でさえ、得票不足で資格を喪失している狭き門だ。

 殿堂入りには「メジャー実働10年以上」という基準があり、野茂氏は日本人として初めて殿堂入りの資格を得ることになる。05年引退の長谷川滋利氏(元マリナーズ)は9年の在籍で1年不足。今後マリナーズ・イチローやレッドソックス松坂が基準をクリアする可能性はあるが、最初に殿堂の門をくぐるのは、野茂氏の可能性が高い。

 記者投票の対象となるのは引退後5年で、野茂氏の場合は2014年からとなる。最近では日本プロ野球の実績も加味するべきとの意見もあり、投票資格を持つ記者間では論議を呼ぶはず。日米通算201勝に、史上4人目の両リーグでのノーヒットノーラン達成、95年のアジア人初のオールスター戦先発。さらにメジャーがストによる人気低迷に苦しんでいた時期に「ノモ・マニア」を全米に誕生させて再び上昇気流に乗るきっかけをつくった貢献度もプラスされれば、殿堂入りの可能性は高まる。

 引退を表明したことで、その足跡があらためてクローズアップされている野茂氏。米国野球界も「先駆者」にふさわしい栄誉を与えることになりそうだ。