<ロイヤルズ5-2マリナーズ>◇17日(日本時間18日)◇カウフマンスタジアム

 【カンザスシティー(米ミズーリ州)=四竈衛、木崎英夫通信員】マリナーズ・イチロー外野手(34)が、メジャータイ記録となる8年連続200安打を達成した。今季通算197安打で臨んだロイヤルズ戦。右翼線二塁打、三塁後方へ落ちる安打で王手をかけ、第4打席に遊撃内野安打を放ち、日米通算300回目の猛打賞(1試合3安打以上)で大台に到達した。8年連続200安打は、ウィリー・キーラーが1894~1901年に達成して以来、史上2人目。近代野球とされる1900年以降では初。残り11試合で、あと15安打まで近づいた張本勲氏が持つ日本最多3085安打に挑む。

 107年の歳月を超えた。近代野球の草創期以来、だれも手をかけられなかった記録に、イチローが並んだ。2安打を放ち、王手をかけた8回表。遊撃前に転がったボテボテの安打が、野球の本場米国の歴史に新たなページを加えた。敵地ファンの祝福に、控えめにヘルメットを掲げても、達成感と解放感は、やはり格別だった。

 イチロー

 めちゃくちゃしんどかったです。今年は何としても200本を外せない年。0から意識する年でしたからね。めちゃくちゃうれしい。それを見せるか見せないかですけどね。

 今年も、最大の難敵は重圧だった。7月29日。日米通算3000本安打を達成した当時以上に、イチローの心には重苦しさが充満していた。毎年、170本を通過する時期に沸き起こる、不安を伴う感情。昨年「そこから逃げるのではなく、正面から向き合う」と覚悟して超えたはずの苦しさに、今年も8月下旬からさいなまれた。その感情は、イチローが「恐怖」と表現するほどだった。

 イチロー

 また来やがったな、ってね。昨年はクリアしただけで次に生かされるかというと、まったく別でした。(安打が)欲しいと思う気持ち、それが邪魔する。できないかもしれないという、恐怖です。それは「8」から来るもので、まず並ばないといけない。それを加味したことで(過去とは)違ったんです。

 重圧をはね返すための準備は、長い時間をかけて取り組んできた。04年に262本の年間最多安打を達成し、技術的な試行錯誤の時期を終えると、その後は、自らの内面を磨くことを強く意識するようになった。05年オフ、ドラマに出演し、ロック界のスーパースター矢沢永吉と対談したのも、グラウンド以外で新たな刺激を吸収し、異なる分野の「一流」が持つオーラを感じ取るためだった。

 それでも、「恐怖」は襲ってきた。孤独に重圧を感じる一方で、チームは地区最下位を低迷する。試合後は、早めにクラブハウスから立ち去ることを心掛けた。

 イチロー

 マイナスの空気が皮膚から入ってくる。それを避けたかった。これまでより僕の世界を作り上げていたと思います。

 あえて自分のペースを崩さなかったのも、質の高いプレーを続けようとするプロ意識からだった。周囲が期待するハードルが高くても、ひるむことはない。残り11試合。張本氏が持つ「3085」の日本記録にも、真っすぐに視線を向けた。

 イチロー

 やりたいですよ。やろうと思ってますしね。絶対超えてやる、そう思ってます。

 行く末に偉大な先人達の金字塔が見える限り、イチローがその足取りを変えることはない。